THE ALFEE、3年半ぶりアルバム 45年の活動を凝縮
8月25日にデビュー45年を迎えた3人組ロックバンド・THE ALFEE。今も年間60本程度のライブを開催するなど、精力的に活動を続ける彼らが、3年半ぶりとなるアルバム『Battle Starship Alfee』を完成させた。
タイトル曲ともいえる『Battle Starship Neo』は、テクニカルなギタープレーと美しくも力強いコーラスワークが織りなす壮大なロックオペラ調の大作。ピアノの独奏に導かれて始まる『はじまりの詩』は、デビュー前夜を連想させる歌詞が印象的だ。エバーグリーンな『私的恋愛論』やフォーキーでセンチメンタルな『風に消えた恋』では、活動当初に軸としていたアコースティックなアプローチが見られる。作詞作曲を手掛ける高見沢俊彦が「アニバーサリーを意識した、アルフィーヒストリーのような作品」と語る通り、多彩な音楽性を備えた濃密な1枚に仕上がっている。
クイーンの再評価が励みに
高見沢俊彦 タイトルには、この先もバトルスターシップに乗って前進するぞという思いを込めました。と同時に、84年のシングル『STARSHIP 光を求めて』も重ね、僕らの歴史を感じてもらえるものにもなっています。アコースティックからプログレ、ポップ、メタル的なサウンドやコーラスワークなど、これまで通ってきた僕らの音楽的な歴史が分かるようなものにしたいと思いながら作りました。45年分の重みや技術がこの1枚に出ていると思います。
桜井賢 そっか!そうだったのか。
坂崎幸之助 (笑)。レコーディングは楽器や歌、コーラスとパートに分けて録るから全貌が見えない時がある。完成した音源を通して聴くとファンのみんなと同じような新鮮さを感じますね。
高見沢 曲のアイデアはツアーから生まれます。ライブの中で「次はこんな曲をやってみたい」とひらめいて、「イントロで照明をこう動かそう」とか、ステージングも考えて曲を作ります。頭の中で考えているだけではライブ向けの楽曲にはならないんですよね。構成自体はイントロがあって、AメロとBメロ、サビのあと間奏、最後にアウトロという形を守っています。今はヒップホップやダンスミュージックが主流で、イントロや間奏がない曲、(バンドでも)ギターソロなどない曲が多い。だからこそ、僕らはそこにこだわっていますね。ステージングも含めて、そういう起承転結のある楽曲が僕自身大好きなんですよ。
坂崎 『Battle Starship Neo』はイントロが2分と長いよね。こういうのを今どきやるのも僕らだけだしね(笑)。
桜井 レコーディングの時、「これってどこから歌?」って高見沢に聞いたくらい、譜面を見ても歌のパートまでが複雑で長い。楽器やコーラスなどが重なり合った完成形を聴いて「こうだったのか」と腑に落ちた。まぁ長くやってきた信頼関係があるから、全貌が見えなくても安心して弾けるけど。
高見沢 そこは任せて下さい(笑)。去年、映画『ボヘミアンラプソディー』がヒットして、クイーンが再評価されましたよね。実は、僕らのデビューは彼らの1年後。今の時代に、クイーンのサウンドが評価されたことは、ほぼ同期のバンドとしては、かなり励みになります。THE ALFEEのフレディ・マーキュリーはますます元気ですからね。今度はああいう衣装でお願いします。
桜井 え? 俺のこと!?
ライブに向けた自主トレも
テレビなどで見る姿そのままに、ユーモアを交えて和やかに話す3人。「デビューしてからずっとツアーを回り、レコーディングをしてきた。それは45年たっても変わらない」と胸を張る。一方で、作詞に関しては進化している。何気ない日常の大切さを高らかに歌い上げる『今日のつづきが未来になる』や、メランコリックでドラマチックなサウンドと人生のつらさを吐露する歌詞が対照的な『人間だから悲しいんだ』などは、年齢を積み重ねたからこそ説得力が増すライフソング。SF的な壮大な世界観から学生時代の淡い恋、人生に疲れた大人の嘆きなど歌詞の世界の多彩さもTHE ALFEEならではの魅力になっている。
高見沢 今はライブが重要視される時代になって、ツアーをやるアーティストも増えたらしいけど、僕らはずっと変わっていません。4月から春ツアーに出て、夏はイベント、秋ツアーの後には年末のアリーナツアーと、何十年も休みなく続けています。現役でいたいというこだわりがあるから続けられたのでしょうね。
桜井 お客さんの前で本気で歌う体になっているのは確かだね。
高見沢 だけど、シングルなど3人ともあまり「歌いたがらない」んですよ(笑)。最近はキーで割り振るようにしましたが、オーディションでメインボーカルを決めることもあります。『人間だから~』は3人で歌ってみて、ベストの坂崎バージョンを選びました。あと、歌入れして数日経ってからイメージとちょっと違うかなと思って、歌い直してもらうこともあります。
坂崎 今回もあった(笑)。キーが少し高いけど頑張れと言われた。
高見沢 そうだね。そこは臨機応変にできるバンドだからね。歌詞に関しては、還暦を過ぎて小説(18年・『音叉』)を書いたのは大きかったかな。短編小説のプロットを書くように歌詞を作ったので、いつもより早かった。スタジオでお待たせすることがなくなりましたね。
桜井 完成したら今度はライブで披露する番。「これをどう再現しようかな」っていうのが、目下の悩みです(笑)。
坂崎 そのために自分の楽器やコーラスだけの音源を作ってもらって自主トレもします。ベースは歌メロと違うことを弾いてるから難しいと思うよ。しかも練習が地味だよね(笑)。
桜井 そこはもう諦めてます(笑)。自宅でご近所迷惑にならないよう、鼻歌を小さく歌いながら練習してますよ。
高見沢 昭和、平成そして令和と歌い続けている僕らには膨大な曲があり、新曲などなくてもライブは成立しますが、現役であるというプライドが新曲を作り続ける原動力ですね。いつまでやり続けるのかは分かりませんが、とりあえずあと5年、70歳までは頑張りますよ。このまま行けば、その頃にはコンサートの通算本数が3000本になりますからね。そこまで行ったらきっと、また違う風景が見えることを期待しています!
前作『三位一体』より3年6カ月ぶりとなるアルバム。シングル曲『今日のつづきが未来になる』『あなたに贈る愛の歌』『人間だから悲しいんだ』を含む全11曲を収録。宇宙をイメージした壮大なイントロから荘厳に響き渡るコーラスに圧倒される『Battle Starship Neo』。キャッチーなメロディーが耳に心地よいハードロック『Rock憂』など、プレーヤビリティが冴える力強いロックナンバーに心が奮い立つ。どこか懐かしさが漂うポップロックナンバー『東京狂詩曲』は、バブリーな男女の駆け引きに思わず笑みがこぼれる。通常盤にはアニメ『北斗の拳』主題歌をカバーした『愛をとりもどせ!!』も収録。(ユニバーサル/通常盤3000円・税別)
(ライター 橘川有子)
[日経エンタテインメント! 2019年8月号の記事を再構成]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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