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AIロボットが先生 小学生が授業で学んだことって

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日経DUAL

「将来、人間の仕事を人工知能(AI)に奪われるのでは?」など、とかく「脅威」のように捉えられがちなAIロボット。「AIロボット時代」に大人になる今の子どもたちの親は、どんな心構えでいればいいのでしょうか。「今や、数千円でAIスピーカーが購入でき、スマホでも対話するAIアプリが簡単にダウンロードできます。子どもの時から、AIに慣れていきましょう」と慶応義塾大学理工学部管理工学科の山口高平教授はアドバイスします。

AIロボットを恐れず、過信せず、豊かに共生するためにはどうしたらいいのか。その答えの一つである、杉並区のある小学校での試みを紹介しながら、親が知っておきたい心得を探りました。

ロボットが授業するようになったら、先生は失業?

昼下がりの教室。教室の前方には、愛嬌(あいきょう)のある人型ロボット「NAO」と、ロボットアームの「JACO2」が生徒たちを見守っている。ここ、杉並区立浜田山小学校では、特色ある学校づくりの一環として、先進的なAIロボット授業を取り入れている。この日、授業を受けたのは5年生の児童たちだ。

「NAOの知識が豊富でびっくりした」

「僕たちが言ったことを、もうちょっとちゃんと聞き取ってほしい、聞き取り間違いは困る」

「将来、もっと進化すれば、このロボットも安くなるんじゃないですか?」

「将来、ロボットが授業するようになったら、先生が失業してしまうんじゃないかと思いました」

AIロボット授業の最後に、担任の幸阪創平先生が感想を聞いたところ、子どもたちから、こんな発言が次々と飛び出した。率直な意見の数々に、あちこちで笑いが起きる。

幸阪先生が授業中にチラチラ見ていた紙を指さして「先生、台本読んでるじゃないですか」と指摘する男子も。

「これがプログラミングだよ」と幸阪先生はニッコリ。こんな感想が自然に導き出されるAIロボット授業とはどんなものなのか。その模様をリポートする。

ロボットと先生の掛け合いで笑いが起きる

子どもたちは授業の前準備として6日前、NAOと「顔合わせ」を行った。NAOが太極拳を披露したり、顔認証による年齢当てゲームをしたりして、楽しい時間を過ごした。

このロボットたちは、慶応義塾大学理工学部管理工学科の山口高平教授の研究室から貸し出されている。そもそも、杉並区立浜田山小学校の伊勢明子校長が、特色ある学校づくりを模索する中で、ロボット授業を思い付き、自ら山口さんの講演を聞きに行くなどしてつながりをつくり、研究室に働きかけたのがきっかけで連携授業が実現した。

今日の授業で、子どもたちは「振り子の動き」について学ぶ。NAOとJACO2は教師支援ロボットという位置付けだ。

「皆さんこんにちは」といったNAOによる簡単なあいさつが終わると、幸阪先生が、身の回りにある「振り子の動きをしているもの」にはどんなものがあるかと問いかけた。児童からは「メトロノーム」「昔の時計」「ブランコ」「バイキング(遊園地の乗り物)」などの意見が出た。

幸阪先生が、振り子の動きをする昔のおもちゃを持って来ようとしたら生産中止になっていた、と話すと、NAOがすかさず「幸阪先生古いですね。ジェネレーションギャップを感じます」と応じて、子どもたちの笑いを誘う。

今日のテーマは、「振り子が一往復する時間の要因を予想する」。

子どもたちは3~5人のグループになって着席。各グループに1台ずつ、振り子の糸の長さや、おもりの数を変えることが可能な実験装置が置かれている。まずは、音楽のテンポに合わせて振り子を揺らすことができるか、みんなで実験する。音楽を流すのはNAOの役目。幸阪先生に促され、子どもたちはNAOの顔のすぐ前まで近づき、リクエスト曲を伝える。一人の子どもが「宇宙戦艦ヤマト」と言うと、NAOは「そんな気分じゃない」。最終的にはNAOが「星野源が大好きでして、『ドラえもん』はどうでしょう」と提案した。

クラスの子どもの事情にも詳しいNAOにみんな驚く

先生が「音楽を流してください」とNAOにお願いすると、曲が流れ始めた。子どもたちは、曲がかかっている間、糸の長さやおもりの数を変えるなど試行錯誤しながら、振り子の揺れる動きが曲のテンポに合うように調整する。

次にNAOが「今度はノリノリの『U.S.A』はどうでしょう」と提案。「〇〇さんや〇〇さんはアメリカが懐かしくなるかもしれませんね」とアメリカに住んでいた子どもの名前を挙げて付け加えた。子どもたちについて詳しく知っているNAOに、みんな驚く。

幸阪先生の提案で、最初の30秒はみんなで音楽を聴き、足でリズムを取ったり、体を揺らしたりして、曲のテンポをつかんでから実験。

「曲のテンポに振り子の動きを合わせるためにはどうすればいい?」。幸阪先生は子どもたちに問いかけ、机の間を歩きながら、みんなが自分の考えを書き出しているノートをのぞき込み、「他にもあるかな?」などとアドバイスして回る。

次は、各自で導き出した答えを、子どもたちが"NAO先生"に伝えにいく。顔の正面に立って、ゆっくりはっきりと話す必要がある。一人が「糸の長さ」と伝えると、なかなか認識してくれない。認識された言葉は、教室前方につるされたプロジェクターに映し出されるが、出た文字は「猫の長さ」。教室内に大きな笑いが起きた。今度は、別の子どもが「おもりの数」と伝えると、今度は「お守りの数」「氷の数」「森の数」などと読み取られてしまった。

今日の授業はここまで。幸阪先生が「振り子の一往復の時間が何によって変わるのだろうか」という次回の授業のテーマを発表、子どもたちはノートに書き留めた。

最後に、子どもたちは、初めてのAIロボット授業への感想を発表した。ある女子は「NAOは賢いし、面白いロボット。大人になる頃どれくらい進化してどんなふうに役立つのか楽しみ」といい、別の男子は「将来もっといいロボットを自分で作りたい」とも。

「NAOはいろいろしたけど、JACO2の出番が少なくてかわいそうだった」

「幸阪先生とNAOは仲がいいのか、仲がよくないのかよく分からなかった」

自由闊達に意見が飛び交う。「本音を引き出すことが大事です」という伊勢校長は教室の片隅で、先生と子どもたちとのやり取りを聞いて、ほほ笑んでいた。

ロボット先生がいい? 生身の先生がいい?

幸阪先生がこんなことを聞いた。「(1)NAOみたいなロボット先生がいい、(2)生身の先生がいい、(3)両方がいい、から選んで手を挙げて」

過半数以上の手が上がったのは(3)だった。「ロボットの言ったことを、生身の先生が詳しく説明する今日みたいな授業のほうが効率がいいと思います」という声も出た。

NAOは幸阪先生と掛け合いをしたり、音楽を流したりして所々で授業に絡み、先生のスムーズな話術に、自然に溶け込む形で進められた。

こんな鋭い感想も出た。

「慶応大学の人が、NAOの感情を動かしているんでしょ?」

「授業は全部、NAOのプログラミングしている人と、幸阪先生の計画のうちなんじゃない?」

「『〇〇くんが授業中にこういう発言する』とNAOは予言していたみたいだった。なんで分かったの?」という疑問も飛び出した。例えば、NAOは、「野球に詳しい」「アメリカに住んでいた」など子どもの特性も踏まえた上で発言をした。この日の授業では、子どもたちに明確に示されなかったが、タネを明かせば、幸阪先生とNAOのやり取りはすべて事前にプログラミングされている。伊勢校長によると、通常の授業でも、子どもの特性を把握して流れを想定し、授業が進められているというが、その手法にのっとって、AIロボット授業でも子どもの発言を想定してシナリオを作り、プログラミングしているという。

普通の教員でもできるということをもっと広く伝えたい

「AIロボットによる振り子の実験授業はうちのオリジナルです。私自身、専門は理科で、これならできそうかなと考えました。去年の初めての導入時は、私自身が先生役をしましたが、45分の枠を20分で終えてしまった。その反省なども踏まえて、今年改めてチャレンジしたのが、今日の授業です」と伊勢校長は話す。

昨年は、まず伊勢校長自らが先生役を務めるために、慶応義塾大学の日吉キャンパスに足を運び、授業ワークフローを書けば、ロボットに発話や動作をさせるプログラムを自動的に生成するツール「PRINTEPS」を学んだ。

「AIスピーカーが家にある、という家庭もありますので、慣れている生徒もいますが、AIロボットがどういう存在かを知ることがまず大切です」と伊勢校長は強調する。「知らないと、不安や恐れにつながります」

「例えば、今日の授業でも、音声認識がうまくいかなくて、人間がAIロボットに合わせて言い方を工夫するなどの必要がありました。AIロボットにもできること、できないことがある。つまり、AIロボットを妄信しない、ということも生徒たちは学べました。AIロボット授業で深く関わったからこそ、それを知ることができたと思います」

今回の授業は、授業ワークフローツール「PRINTEPS」を使ってプログラミングした。「パターン化されたものを組み合わせるだけなので、専門家じゃなくても、普通の教員でもできます。その点をもっと広く伝えたいです」と伊勢校長は言う。

事前準備はかなり手間ひまがかかるが、山口研究室の院生が研究の一つとして協力してくれているという。

AIが「できること」「できないこと」を実感するのが重要

山口研究室では2015年から私立や公立の小学校にAIロボット授業を導入する協力をしている。「既に4年経過しましたが、教師が自分で使えるようになったのは、今回が初めてです」(慶応義塾大学理工学部管理工学科教授の山口高平さん)

「未来社会において、人の仕事や日常生活にAIソフトウエア、AIロボットが関わってくるのは確実な状況です。そのような未来社会に備えた勉強とは? とよく聞かれますが、まずは、AIに慣れて、AIが『できること』『できないこと』を実感することが重要であり、AIロボット授業の価値もそこにあると考えています」(同)

「浜田山小の『振り子の動き』授業では、1種類のロボットではなく、2種類のロボットと教師が連携した授業ですので、ロボットごとに役割が異なり、マルチタスク・マルチロボットの未来社会を実感できると思います」(同)

浜田山小ではこれまで、他にもさまざまなAIロボット授業を実施してきた。「今回の授業では、教師が書いた授業ワークフローどおり、ロボットは発話して動くだけですので、ロボットが自分で考えて行動することはありません。ですが、2018年には、グループ討論でロボットと子どもたちが議論するなど、より高度なAIを取り入れた授業も別途実施してきました」(同)

「子どもの時から、AIに慣れていきましょう」

山口さんによると、これまで慶応義塾幼稚舎、横須賀市立鶴久保小、開智望小学校で連携実績がある。2018年度は浜田山小だけだった。

AIロボット授業を小学校に導入するのはなかなか簡単なことではないという。伊勢校長によると、いろいろと制約の多い小学校内でロボットを動かせる環境を整えるだけでも半年以上かかったという。行政やPTAなどに協力を仰ぎながら、進めてきた。

山口さんも、こうした授業を継続するために必要なこととして「まず、校長および教員の理解と関心が重要」という。「浜田山小学校では、伊勢校長が熱心に対応していただいているので、続いていると思います。また、すべてのハード(ロボット、パソコン、マイクなど)を大学から小学校に持参するのは大変ですので、学校にロボットがあると助かります。慶応義塾幼稚舎と開智望小学校にはPepperがあり助かりました。あと、1研究室で多くの学校に対応するのは無理なので、普及していけば、事業化を考える必要があるかもしれません」

最後に、AIロボット社会に生きるであろう子を持つ親に向けてのアドバイスを山口さんからもらった。「未来社会は、人との交流は従来通り大事ですが、それに加えて、AIとの交流も重要になってきます。今や、数千円でAIスピーカーが購入でき、スマホでも対話するAIアプリが簡単にダウンロードできますので、子どもの時から、AIに慣れていきましょう」

(取材・文・写真 小林浩子=日経DUAL編集部)

[日経DUAL 2019年4月2日付の掲載記事を基に再構成]

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