2019/8/20

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振り子の先に待つ歴史的転機

逆に右極にあたる1910年代には各国が金本位制から離脱し、1945年にはブレトンウッズ体制が開始し、その後1ドル=360円と定められました。また右極に向かう途上の1971年にはニクソン・ショックが発生し、右極の1980年代半ばにはプラザ合意により米ドルが再度下落に転じるなど、国際通貨システムの転機を迎えているのです。

つまり、振り子の左極では、株式バブルが崩壊し、右極では、国際通貨システムが揺らいでおり、振り子の振り切った先には、かなりの確率で歴史的出来事が発生しているのです。

そのように考えると、現代が、振り子が右方向に振幅している時代だとするならば、その時代が終わりを告げるころには、国際通貨システムや決済システムを根幹から揺るがす激震が発生するかもしれません。

通貨安競争、そして新通貨システム?

現在の主要通貨間での通貨安戦争が、この激震を予兆させる前哨戦とすれば、その先には「Libra(リブラ)」をはじめとする新しい通貨システムへとつながる道も描けそうです。少なくとも、既存通貨は自国通貨安戦争という不健全な競争を繰り広げているのに対して、今後、複数提案されてくるステーブル・コイン間では「美人競争」が繰り広げられるため、健全な競争という点では対照的といえるでしょう。

しかし、新通貨システムは利便性、セキュリティー、プライバシーという側面からの競争を繰り広げるだけではなく、振り子が右極に至るまでの間には、政府からの干渉と規制が強まることが予想されるのは必定です。この熾烈(しれつ)な競争と介入に打ち勝った通貨システムは、やがて振り子が左旋回した「平和・協調の時代」の主導権を握り新しい時代を担うとするのは、考えすぎでしょうか。

プロのポートフォリオは運用に精通したプロが独自の視点で個人投資家に語りかけるコラムで、原則火曜日掲載です。
平山賢一
 東京海上アセットマネジメント執行役員運用本部長。1966年生まれ。横浜市立大学商学部卒業、埼玉大学大学院人文社会科学研究科博士後期課程修了、博士(経済学)。東洋大学経済学部非常勤講師。30年にわたり内外株式や債券をアセットマネジメント会社で運用する。著書に「戦前・戦時期の金融市場」「振り子の金融史観」などがある。