色彩豊かで立体音響 ドルビーシネマ、シネコンに続々
音響技術で知られるドルビーラボラトリーズ社が開発した新しい上映システム「ドルビーシネマ」が日本で広がっている。2018年11月にT・ジョイ博多、19年4月にMOVIXさいたまが導入したのに続き、6月28日に梅田ブルク7が導入。10月4日には丸の内ピカデリー3がドルビーシネマ専用シアターとなる。近年シネコンでは高機能化が進んでおり、ドルビーシネマがその決定打になるかもしれない。
ドルビーシネマの技術は色彩豊かな映像表現を可能にする。例えば赤ひとつ取っても表現できる種類が増え、クリエイターが望むような映像を生み出すことができる。黒がより黒く締まることで暗闇の中でも物体の輪郭や動きが見えたり、光がより輝ききらめいて見える。このため、J・J・エイブラムス、ジェームズ・キャメロン、ブラッド・バード、ザック・スナイダーといった有名監督がドルビーシネマへの支持を表明しているという。
ドルビーシネマは15年にオランダから展開が始まり、世界で400スクリーン以上が導入(予定を含む)。19年にアメリカにおいてドルビーシネマに対応した公開済みおよび公開予定の作品は46本にのぼる(6月17日時点)。『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』『トイ・ストーリー4』『ライオン・キング』など夏の話題作は網羅されている。
またドルビー社ではドルビーシネマに対応した日本映画の上映にも力を入れている。水谷豊の監督2作目『轢き逃げ‐最高の最悪な日‐』が邦画初のドルビーシネマ作品として5月に公開された。ハリウッドのように映画関係者の支持を広げようと、ドルビー社では日本のクリエイターにドルビーシネマの良さを訴える啓もう活動も行っている。
シアターデザインも独自
ドルビーシネマは立体音響技術「ドルビーアトモス」と映像技術「ドルビービジョン」で構成されている。ドルビーアトモスは劇場内の天井や観客席の周囲に数多くのスピーカーを配置し、あらゆる方向から音が聞こえてくる。ドルビービジョンは2台の4Kプロジェクターを使い、従来の劇場より2倍明るく、明暗のコントラスト比は500倍になる。さらにシアターデザインも独自仕様で、座席は黒を基調とし、壁・天井・通路にはスクリーンからの反射を防ぐ素材が使用されている。観客が映画に没入できるよう考え抜かれたデザインだ。
T・ジョイ博多、梅田ブルク7に導入したT・ジョイは「近隣のお客様をはじめ、まだ映画館に足を運んでいないお客様への強烈な訴求となり、ひいては映画人口の底上げにつながることを期待しています」。
シネコンは複数のスクリーンや見やすい座席配置など、既存の映画館にはない魅力で普及してきたが、シネコン間の競争が激化するようになると、差別化のために高機能化のサービスを導入してきた。
まずはIMAXデジタルシアター。床から天井、左の壁から右の壁まで広がったスクリーンや、2台のデジタルプロジェクターを使った明るくクリアなデジタル映像が特徴だ。次は4Dシアター。座席が映画の場面に連動して前後上下左右に動いたり、風や水、香や煙が出る。そしてスクリーンX。劇場の中央と両側面にスクリーンを設置した3面マルチプロジェクションシステムだ。
10月4日には有楽町マリオン新館5階にある「丸の内ピカデリー3」がドルビーシネマ専用シアターとなる。「都内初となるドルビーシネマ導入に既に多くのお客様よりご期待の声を頂いております。映画鑑賞だけでなく館内全体でプレミアムな映画体験をご提供いたします」(松竹マルチプレックスシアターズ)。
IMAX、4Dシアター、スクリーンXと進んできたシネコンの高機能化。都内にドルビーシネマ専用シアターがお目見えすることで観客の満足度がさらに高まりそうだ。
(ライター 相良智弘)
[日経エンタテインメント! 2019年8月号の記事を再構成]
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