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落語らしさって何だ!? 異業種とのコラボが生んだ疑問

立川吉笑

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NIKKEI STYLE

東京五輪・パラリンピックが「日本らしさ」を考えるきっかけになっているのか、伝統芸能に対する注目が高まっている気がする。僕みたいな若手にも、これまであまり落語に接点がなかったであろうジャンルの方々から仕事のオファーが寄せられてくる。

クライアントが一般企業の場合、少し距離のある落語と自社のサービスや製品を掛け合わせてみようとの狙いはよくわかる。ギャップ、つまりは良い違和感を生み出せれば新鮮に映るし、伝統芸能だから日本らしさもアピールしやすい。そんなクライアントと同時多発的に打ち合わせを進めていたら、改めて自分の中に1つの問いが生まれた。「落語ってなんだろう?」

先方が求めているのは十中八九「落語らしさ」だ。突き詰めれば、必ずしも「立川吉笑」が求められているわけではなく「落語家」が求められている。先方の企画会議の段階で「吉笑さんにぜひとも出演していただきたいからオファーしてみよう」という流れは考えづらい。「落語とコラボできたら新鮮かもね」「じゃあ落語家さんを探してみよう」「立川吉笑さんという方が見つかりました」という感じで呼んでいただいていると容易に想像できる。つまり、大きくアイコンとしての落語を求める中で、たまたま僕の存在が目に留まって声をかけていただいたことになる。

となると、自分としては当然「落語らしさ」を提供すべきなんだけど、改めて考えるとそれは結構、曖昧なものだ。

落語家らしくない僕

落語家と言うと、着物姿で「するってぇとなにかい?」みたいに粋な江戸弁を操り、お世辞がうまく、シャレが利いてる陽気な人、みたいなイメージがあるかもしれないけど、実際の僕は全然違う。着物姿ではあるけど、粋な江戸弁というよりは、いわゆる標準語に近い言葉遣いをするし、お世辞もそこまで得意じゃない。シャレはあまり利かせられないし、目に見えて陽気でもない。全然ダメじゃん(笑)。

普段着の僕と接して、落語家と見抜ける人はまずいないと思う。落語家と名乗っているから落語家として存在できているだけで、自分が落語家である資質など、思えば何もないんじゃないか。もしかしたら、第三者から見たら僕にも少なからず落語家らしい要素があるのかもしれないけど、少なくとも自分では落語家と名乗って落語をやっていること以外、自分に落語家らしさを見いだせない。

それこそ落語を一席やれたら、落語家としての自分を表現することはできるけど、コラボ企画の大半はPRに関連した企画で、総じて与えられる時間が短い。3分とか、長くて5分とか。その時間で伝えたいことを効果的に伝え、落語らしさも出すのは至難の業だ。

佇(たたず)まいが粋だったり、バリバリの江戸弁を使いこなせたり、落語家っぽさを一瞬で伝えることができる方は当然ながらいる。だけど、たいていは僕よりもずっとキャリアが上の師匠クラス。となると、出演料が高かったり、スケジュールに空きが全くなかったり。もっと言えば、仕事の軸足が寄席にあって、ホームページやSNS(交流サイト)をあまり使われないから、企業とのマッチングがスムーズにいかないこともあるかもしれない。

その結果、SNSなどを活用して様々な仕事、いわば「落語家っぽくない活動」を普段からやっている若手に、「落語らしさ」を求めるオファーが集まってしまう。自分も、せっかくの仕事は全力で取り組みたいし、良いものにしたい。だから考える。「落語らしさ」を表現する最善の方法は何だろうか。

例えば、3分の落語形式で商品を紹介する場合。この短時間でわかりやすく「これぞ落語だ!」と伝えるのは難しい。着物姿で座布団に正座し、右を見て、左を見てと首を振りながらしゃべると、落語らしさは出せる。でも、これだけだと、どうやら弱い。

講談や浪曲、一瞬でわかる「らしさ」

落語と同じ伝統話芸と称される「講談」や「浪曲」は、また見え方が違う。いま演芸界で最も注目を浴びている神田松之丞兄さんを擁する講談は、落語と同じく座布団の上に正座をして演じるものだけど、違うのは目の前に釈台と呼ばれる机のようなものがあることと、それを張り扇でパンパンたたいたラップ音が語りの中に入ってくること。七五調をベースにした独特の言い回しや、ラップみたいにリズミカルな読み方を聞けば、聞き手は一瞬で「普通の語り口じゃない」とわかる。鮮やかに講談らしさが伝わってくる。

浪曲はさらに独特で、ストーリーを紡ぐ浪曲師とは別に、三味線を弾く曲師が同じ舞台上にいる。七五調がベースになっていることに加えて、そこに節をつけて「旅ぃ行けばぁ~~」と唸(うな)るパートが織り込まれ、ときに伴奏、ときに合いの手のように、三味線が入り込んでくる。これも一瞬で「浪曲らしさ」が伝わる。

それらに比べて「落語らしさ」は、いかにおぼろげなことか。

重鎮の師匠みたいに見た目に説得力があって、声に年輪が感じられるところまでいけば、それだけで落語らしさはにじみ出るかもしれない。でも僕はまだそのレベルに達していない。細かいことを言うと、左右の首の切り方とか言葉のつなぎ方とか発声とか、随所に落語ならではの技術は存在するけど、それは一瞬で「落語らしさ」をだれもに伝えられるものではない。

せっかく落語家として誰かに必要とされているのだから、胸を張って現場に行きたい。そのためには「これが落語です」と明確に言える何かを、しっかり自分で見つけなくちゃいけないだろう。異なるジャンルとのコラボが、自分の足元を再確認するための契機になってくれている。

立川吉笑
 本名は人羅真樹(ひとら・まさき)。1984年6月27日生まれ、京都市出身。京都教育大学教育学部数学科教育専攻中退。2010年11月、立川談笑に入門。12年04月、二ツ目に昇進。軽妙かつ時にはシュールな創作落語を多数手掛ける。エッセー連載やテレビ・ラジオ出演などで多彩な才能を発揮。19年4月から月1回定例の「ひとり会」も始めた。著書に「現在落語論」(毎日新聞出版)。

これまでの記事は、立川談笑、らくご「虎の穴」からご覧ください。

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