寄生虫ハリガネムシ どうやって宿主の心を操るのか神戸大学 群集生態学 佐藤拓哉(3)

では、その時、宿主の脳の中では何が起きているのか。

「脳内で発現しているタンパク質をチェックできる技術が2000年以降に出てきたので、それを使った研究がされています。いろんな段階のコオロギ──ハリガネムシに寄生されてるやつ、寄生されてないやつ、寄生されているけれどもまだ行動操作を受けていないと思われるやつ、あるいは寄生されてお尻からハリガネムシを出してしまった後のやつ。そういうものを集めてきて、脳内に発現しているタンパク質を徹底的に見たわけです。すると、まさに飛び込もうとしているようなコオロギの頭の中でだけ、発現しているものがいくつか見つかりました。それをさらに『ホモログ解析』という手法で調べると、神経の異常発達にかかわったり、場所認識にかかわったり、あるいは光応答にかかわる日周行動に関係したりするタンパク質と似ていると分かったんです。他の生物の研究で機能が確かめられているものと似た構造を持っていたという意味です。その中には、ハリガネムシのほうがつくったと思われるものも含まれていたんです」

これまた出来すぎな話なのだが、ハリガネムシはまさにそれをやってのけている可能性がたあるのだそうだ。

「行動実験と分子生物学的な実験の結果を合わせて考えると、おそらく神経発達をグチャグチャにして異常行動をさせながら、光応答の仕方を変えて、水辺に近づいたら飛び込むというような、2ステップで行動操作を巧みにしてるんやってことが、今は想像されてます」

まったく、こんなことがどんなふうにして可能になったのか。信じがたいほどだと感じる。だからこそ、佐藤さんも神戸大学の共同研究者らと、この分野に切り込んでいく予定だ。そのためには、ハリガネムシを飼って寄生させて、というサイクルを研究室の中で回さなければならないと思うのだが、それは大丈夫なのだろうか。あれを飼育するというのは宿主もまとめて飼育するということで、相当大変ではないか。

佐藤拓哉さん

「実は、ハリガネムシの成虫を研究室に持って帰ってくると、すぐ卵産んでくれるんですよ。で、しばらく待つと卵がふ化して、『ああ、うまいこといった』ってなって。それで、水生昆虫を近所の川からとってきて幼生と一緒にすると、5日ぐらいするとシストをつくるんです。で、『ああ、うまいこといった』って言って、その水生昆虫を終宿主、コオロギに食べさせるんですけど、なぜかそこでうまいこといかないんです」

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