ラグビーの力はすごい ようこそ海と山のスタジアムへ釜石の高校3年生 洞口留伊さん

――話題となった新スタジアムのキックオフ宣言を含め、釜石を盛り上げる活動を続けています。原動力は何でしょうか。

「震災を経験していることと、イングランドに行ったことが大きいと思います。震災後、世界からたくさんの支援をもらい、自分は高校にも入れて、勉強を続けられる環境にいる。そのことへの感謝を伝えたい気持ちがあります」

新スタジアムは「震災で離れ離れになってしまった友だちと、また会える大切な場所」(キックオフ宣言より)だ(2019年8月、岩手県釜石市)

「イングランドでは現地の方々が、日本語で『こんにちは』と話しかけてくれたり、一緒に『君が代』を歌ってくれたりして、うれしかった。中学生だったし、初めての海外はちょっと怖かったんですけど、安心できました。その感謝の思いも、釜石で人々を温かく迎えることで届けたいと思っています」

――釜石でのフィジー戦の際は、スタジアムまで最寄りの三陸鉄道リアス線鵜住居駅からどう歩けばいいのか、ネット動画で伝えていました。来場者の反応はどうでしたか。

「『おかげでここまで来られました』という人もいてくれたので、よかったです。高校生は(19年3月末時点で18歳以上が対象となる)公式ボランティアにはなれないので、自分たちにできるのは何だろうと考えました。高校生ならではのアイデアによる事前の情報発信で、当日の混雑をやわらげるといった活動はできると思います。W杯本番に向けても、一緒にイングランドに行ったメンバーで何かしたいと話し合っているところです」

――釜石の新スタジアム、自慢してください。

「私はイングランドのスタジアム、味の素スタジアム(東京都調布市)、秩父宮ラグビー場(東京・港)に行ったことがあるんですけど、スタジアムをはさんで海と山があるのは、釜石だけです。メインスタンドの高い位置から見て、観客席の向こうに海があるのは、きれいだなぁと思っています」

釜石鵜住居復興スタジアムのメインスタンド中央にある時計

「同じ場所に(津波で被災した)鵜住居小学校と釜石東中学校があったことを伝えるために、(メインスタンド中央の)時計は、デジタルじゃなくて、学校にあったのと同じような円く数字がついたものになっています。通っていた者としてはそれもうれしいです」

――釜石ではフィジー対ウルグアイ、ナミビア対カナダの試合があります。とくに応援してるチームはありますか。日本代表へのエールも。

「全部応援したい。とくにフィジーはこの前も来てくれたので。スクラムユニゾン(出場チームの国歌などを覚えて来場者をもてなす団体)の方々が開いてくれたフィジー国歌の練習会にも参加しました。日本代表には、いっぱい勝ってもらって、優勝してほしい」

――今の釜石にとってラグビーはどんな存在になっていますか。

「復興にものすごい力を与えてくれる存在なのかなと思います。やっぱりW杯が来ると決まってから、釜石がひとつの目標に向かって団結して、復興のスピードも速くなったように自分では感じています。W杯の後も大切で、ラグビーの人気が衰えないように地域が一緒になって盛り上げて、街がもっと良くなるといいなと思っています」

――ご自身について、どんな将来を考えていますか。

「キックオフ宣言などを通して、自分は『伝える』ということが好きなんだな、と思いました。災害が起きたときに逃げ遅れる人が出ないよう、自分で的確に判断して、発信できるアナウンサーになりたいと思っています。大学でも『防災』を学びたいと考えています」

洞口留伊
2001年(平成13年)9月、岩手県釜石市生まれ。鵜住居小3年のとき東日本大震災が発生、津波の襲来前に校舎から高台に避難したが、隣接する釜石東中を含め学校や自宅は被災した。18年8月19日の釜石鵜住居復興スタジアムオープニングイベントで「わたしは、釜石が好きだ」に始まるキックオフ宣言「未来への船出」を発信。県立釜石高校ソフトボール部では投手兼捕手。現在は大学入試に向けて勉強に励む3年生。

(聞き手 天野豊文 撮影 岩田陽一)

洞口留伊さんの釜石鵜住居復興スタジアム キックオフ宣言「未来への船出」(https://www.facebook.com/rugbyworldcupjp/videos/290647705053533/)はこちら

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