まずは財産を洗い出し 家族のために「お金の終活」夏に考える終活(下)

 最近はネット銀行やネット証券で取引する人が増えているでしょ。スマートフォンやPCの中にあるデジタル情報はどうなってしまうのかな。

幸子 「デジタル遺品」の問題ね。PCやスマホの情報は引き継いでおかないと、家族は財産や負債があることに気づきさえしないことがあるわ。ネットで取引していることを伝え、PCやスマホにログインするためのIDやパスワードを残しておくのが重要ね。IDとパスワードをそろって書くのはセキュリティー上危険なので、パスワードはヒント程度にとどめるのが有効との指摘もあるわ。

良男 生きていればお金の状況も変化していくだろうから、リストは一度つくったら安心というものじゃないな。

幸子 内容が変われば適宜更新したいわね。年に1回、誕生日とか正月といった節目に見直すのもいいかも。作成日や更新日も記しておくこと。そして作ったことや保管場所を家族ら信頼できる人に伝えておくのも重要よ。万が一の際に家族がその存在を知らなかったり、見ることができなかったりしたら意味がないでしょう。それから重要な書類や印鑑もまとめておきたいわね。

 重要な書類って何?

幸子 金融機関や役所から送られてきた通知や契約書類などね。不動産賃貸や金銭貸借、生前に購入した墓、貸金庫やレンタル倉庫などいろいろありそう。種類ごとにファイルしておくといいわね。保険証券も給付金や保険金を請求するのに重要よ。中には受取人が亡くなっているのに名義がそのままというケースもあるのよ。「受取人は本当にその人でよいかも改めて確認し、必要に応じて変更したい」と税理士の福田真弓さんは注意していたわ。

良男 お金の終活をしておくと、いざという場面で役立つし相続も円滑に進みそうだ。でも子の立場からすると、親に「財産はどうなっている」とはちょっと聞きにくいかも。

幸子 遺産目当てと勘繰ったり、お金については口を閉ざしたりする親もいるからね。その場合は「友達にこんな人がいてね」というふうに切り出すとか、他のきょうだいや第三者から話してもらうのもいいかもしれない。夏場の帰省時などは親子で話をするよい機会だけど「一度に全部聞こうとせず、徐々に聞き出したほうがいい」と明石さんも話していたわ。

■任意後見契約で認知症に備え
司法書士 勝猛一さん
財産の一覧は親本人が作るとよいでしょう。相続関連の業務をしていて最近よくあるのは、自分で買った不動産なのに価値が減って本人も忘れていたり、祖父ら一代前の名義の家に住み続けていたりする事例です。前者は子が継ぎたくないこともあるので売却した方がよく、後者は本人名義に換えておきます。長く住み続けた家なら土地を測量して子に引き継ぐことも考えましょう。これらの作業は親の死後に子がするとなると余計手間がかかるからです。
親が倒れたり、認知症になったりした際に財産リストがあると子は助かります。おひとり様や子がいても遠くに離れているような場合には、信頼できる人と任意後見契約を結んでおくのが有効です。契約すれば専門家が財産目録を作ります。
(聞き手は土井誠司)

[日本経済新聞夕刊2019年8月14日付]

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