Men's Fashion

仕事着から生まれたアメカジ 日本のデザイナー触発

石津祥介のおしゃれ放談

原宿CASSIDYでアメカジを語る(下)

2019.8.22

エル・エル・ビーンなどのアウトドアブランドがリバイバルし、米国のワークウエアをベースにした日本人デザイナーの服が人気を集めている。アメカジの名店「原宿CASSIDY(キャシディ)」に並ぶのはこうした注目の品々。バイヤー、八木沢博幸さんのお眼鏡にかなったアイテムの中には、かつて一世を風靡した商品とキャシディとのコラボ商品もそろう。服飾評論家、石津祥介さんも懐かしさに思わず身を乗り出した。

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■シエラデザインズとオリジナルジャケット

――このジャケット、裏返すとシエラデザインズのロゴが入っていますね。

石津「1960年代の伝統的なアウトドアウエア。シエラといえば代表的なのがマウンテンパーカーですよね。ロゴのフォントも懐かしい。『64(ロクヨン)』クロスだね」

マウンテンパーカーで一世を風靡したシエラデザインズとコラボしたキャシディオリジナルのジャケット。予約で完売した

八木沢「シエラデザインズにお願いして作ったキャシディのオリジナルジャケットなんです。申し訳ありませんが予約で完売してしまいました。シエラの64クロスは綿60%、ナイロン40%で織られた生地で雨を弾いて内側の湿気を逃す、当時としては究極の配合。この素材はロクヨンではなく『65:35』。綿を65%、ナイロンをポリエステルに変えて35%としました。ロクヨンはアウターには向きますが、ジャケットにすると厚みがあって少々ごわつきます。そこでスリーシーズン着られるライトな素材で作ってもらいました」

八木沢「最初、アウトドア系の素材でブレザーができたらいいなとシエラに話したら難しいと言われまして。そこでマウンテンパーカーの要素を取り入れたデザインを考えて再度話を持っていったらOKをいただいたんです。面ファスナーのダブルポケット、バックポケットというディテールが特徴です。3つボタンで2万9000円。こちらはネイビーですがすぐ売れてしまったので、来年は黒も作りたい。うちはずっとアメカジを扱ってきましたが、古典的なものの復活は感じます。ブルックスブラザーズ傘下のファクトリーブランド、サウスウィックのブレザーも人気です。トラッドの名品です」

トラッドなサウスウィックのジャケットを着こなすのはキャシディのスタッフ、茨木辰也さん

――70~80年代のアメカジの名品が復活したり、コラボ商品が出たり。

八木沢「コラボといえば僕は高校生の時にVANとリーガルが作ったローファーを買ったのを覚えています。ビーフロールの」

――ビーフロールですか?

八木沢「(甲ベルトの甲革をつなぐ部分を)ハムみたいにひもで巻くように縫ってあって、ビーフロールと呼んでいました。VANが出しているのだから間違いないと(笑)」

石津「それはVANリーガルといってVANの初コラボ商品ですよ。VANのコラボはリーガルからスタートしたんですよ」

八木沢「いまの若い子がVANのことをどうして知っているかといえば、その後もコラボがたくさん出て、アイビーの象徴的なものとして広まったからではないでしょうか」