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『エリザベート』で「死」をどう演じたか(井上芳雄)

第50回

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NIKKEI STYLE

井上芳雄です。今年の夏は6月7日から8月26日まで、帝国劇場で上演しているミュージカル『エリザベート』に出演しています。黄泉(よみ)の帝王トートを演じるのは3年ぶり。3回目ですが、今回は演じ方や歌い方が少し変わっています。お客さまからの人気が高い役だけに、楽しみにして来られる方の期待を裏切らぬよう、日々工夫を重ねています。

『エリザベート』はオーストリア=ハンガリー帝国の皇后エリザベートの生涯を描いたウィーン発のミュージカルです。トートは、いわゆる死に神なのですが、エリザベートを少女のころから愛し続け、見守りながら、自分の愛つまり死を受け入れてくれる日を待っているという存在です。

僕が最初にトートを演じたのは2015年。そのときは、死に神だからといって仏頂面をしているのもつまらないと思っていて、「生き生きとした死をやりたい」と言っていたし、実際、表情豊かにというか、情熱的な感じで演じていたと思います。トートの中ではエリザベートに対する愛が生まれているのだから、いろんな感情が渦巻いているはずなので。

その解釈は今も変わらないのですが、今回はけいこのとき、演出の小池修一郎先生に「そのままやっても、いつもの井上芳雄になってしまうだろう」みたいなことを言われたし、自分でも、もっとほかの表現はないのかなと考えていました。それで、死に神って何だろう、とあらためて考えたとき、同じ気持ちの動きはありながらも、表情や動きで表さなくても、心の中で何かが起こっていれば伝わるのかもしれない、と思ったんです。

ちょうどけいこの時期に、僕がハマっている海外ドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』の最終章の放送がありました。七王国の玉座争いを描くスペクタクルですが、見せ場のひとつがホワイトウォーカーという死者の軍団と人間の最終決戦でした。その死者の軍団を率いる「夜の王」は表情ひとつ変えずに、大勢の人を次々と殺していきます。それがめちゃくちゃ怖くて「これだ!」と思いました。トートは表情がなくてもいいんだ、と。今回のトートは、ほかにも参考にしたイメージはありますが、メインはその夜の王の様子を思い浮かべながら役作りをしました。

だから前回より動きが少ないと思うし、表情も変化に乏しいと思います。でも、不思議なもので、集中力やエネルギーは今までより大きくなりました。自分の中で何も起こってないと、ただの能面の人になってしまうので、内側ではいっぱい感情を起こしておいて、でも外には出さない。何かが自然とあふれ出てきているはずだ、と信じてやっています。

歌い方は、発声が前回と少し変わっています。この連載で以前書きましたが、2年前に『グレート・ギャツビー』をやったときに歌唱指導の山川高風先生に習い、声を響かせるところが一定になるように変えたことで、安定して声が出るようになりました(「10年ぶりに新しい発声法に挑戦 声が変わった実感」)。発声法を変えてから初めて演じるトートなので、歌いやすくなった実感はあります。

「トートのときの井上さんは、帝劇を壊す勢いですね」みたいに言われることがあるのですが、それは音響の力です。実はトートの声は、ほかの役の何倍もエコーがかかっています。大きな声を出すというよりは、いろいろな種類の声や歌い方で歌っています。それもあって歌いやすいですね。なので発声は多少よくなったと思いますが、僕の声量が急に大きくなったわけではなくて、音響の力を借りながらやらせていただいています。

細かいことですが、トートが羽織っているマントを翻すしぐさにも微妙に変化があります。前回紹介した6月の『レジェンド・オブ・ミュージカル in クリエ』で、鳳蘭さんにお話しをうかがったときのこと(「鳳蘭さんの輝き お客さまの笑顔が大好き」)。宝塚の方たちはマントの裾さばきが慣れているという話になり、蜷川幸雄さんが演出された『ハムレット』に出た際に、けいこ場で蜷川さんが「鳳さんの裾さばきをまねるように」とほかの出演者の人たちに言われたエピソードを話してくださいました。僕も「『エリザベート』ではトートのマントをこんなふうに翻すんですよ」としぐさをしたら、「かっこよくやらないとだめよ。お客さまは、それを楽しみにしてるのだから」というようなアドバイスをいただきました。そのマントの話がお客さまに大受けだったので、「みんな、やっぱりそう思っているんだ」と内心思いました。実際、『エリザベート』のお客さまの感想でも「マントをひらひらさせてくれるのが好き」という声が多いのです。

ミュージカル俳優のさが

そのトークショー以降、ちょっとマントを意識するようになりました。今回は動きを抑えるつもりだったので、マントもこれまでほど派手に翻さなかったのですが、「待てよ」と。「お客さまが意味を見いだしてくれるのなら、それも面白いかな」と思い、演じていて感情が湧き上がったら、自然に体を反応させるようにしています。お客さまに喜ばれると思うと、どうしてもやってしまうのはミュージカル俳優のさがなので、いいのか悪いのか、ではあるのですが(笑)。

今回は3カ月と久しぶりに長い公演なので、ちょっとずつ違うことをしてみるのも面白いと思っています。その瞬間、何かが生まれたのなら、それに忠実にやってみようと。観劇という、その日限りの特別な時間を楽しみに劇場に来ていただいたお客さまの期待に応えられるよう、僕も毎回新しい気持ちでトートを演じています。

井上芳雄
1979年7月6日生まれ。福岡県出身。東京藝術大学音楽学部声楽科卒業。大学在学中の2000年に、ミュージカル『エリザベート』の皇太子ルドルフ役でデビュー。以降、ミュージカル、ストレートプレイの舞台を中心に活躍。CD制作、コンサートなどの音楽活動にも取り組む一方、テレビ、映画など映像にも活動の幅を広げている。著書に『ミュージカル俳優という仕事』(日経BP)。

「井上芳雄 エンタメ通信」は毎月第1、第3土曜に掲載。第51回は9月7日(土)の予定です。

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