年金が不安? ならば今すぐ長期投資を(澤上篤人)さわかみ投信会長

日経マネー

草刈 会長と私の親は同じ世代なのですが、やはり戦争体験、戦後の日本を見ていますから、考え方のパラダイムシフトを知っているようです。つまり、これまでの常識が全く逆になるといったような。ところが高度経済成長を経て、日本が成長する波に乗った多くの人はそれを忘れてしまったのかもしれません。もちろん、その後の世代はそんなことを考えたこともないわけですから、何とかなるとさえ思っていないんじゃないでしょうか。実感がないというか。この無関心層が世の中の大多数であるというのが厄介ですよね。

澤上 「このままでも何とかなるだろう」「いざとなれば国が何とかしてくれる」と、厳しい現実から目を背ける世の中の大多数は、いざ大変な事態に遭遇すると天地が覆るような大騒ぎをする。よくいわれるゆでガエル現象だ。「老後が不安だ」「公的年金には頼れない」と思うなら、さっさと自分ができる対策を講じておくに限る。その対策の柱となるのが、本格的な長期投資による資産形成なんだよね。

長期投資家と大差がつくだけ

草刈 いつの頃からか、自分の世代でも年金なんかもらえないだろうという雰囲気がありましたね。大学卒業がちょうど就職氷河期の時代なのですが、フリーターの人も多くいて年金なんてもらえないのに保険料なんか払うのはばからしいと思う人もいました。そうなると真面目に払う方もばからしくなってしまう。この不公平感がより一層公的年金でも税金でも制度に対する不信感につながっている気がしますね。

そんなことを言っていてもお金は必要になってくる。誰も頼れないなら自分で何とかするしかない。結局そこに行き着きます。

澤上 その結論にたどり着いた人さえ、多くは「長期投資なんて……」と手も着けようとしない。例えば、「さわかみファンド」なら既に20年の実績があり、預貯金など遠く及ばない財産づくりの成果を残している。そんな実例があっても、皆、鈍感そのもの。そういった人たちが、一朝事あらば大慌てする。似たような例は、歴史にいくらでも転がっている。

草刈貴弘氏(左、撮影:竹井俊晴)

草刈 油断して足下をすくわれるという例は歴史上、枚挙にいとまがないですものね。桶狭間の戦い、コンスタンティノープルの陥落、第2次世界大戦のフランス侵攻……。いずれも、まさかという油断が大敗を招き寄せています。260年続いた江戸の天下泰平の世も、黒船襲来で激変しました。身分制度も崩壊したわけですから、その変わりようは天変地異のようなものだったのではと思います。

先日、200年以上続く企業の9代目の方のお話を聞きました。その方の家には「必ず戦争、天変地異、恐慌が起こるから覚悟しておけ」という先祖伝来の心得があるそうです。いずれ大きな災厄が訪れるという前提で事業を継続しているわけですから、その心得の言葉の重みに何か感じ入るものがありました。

澤上 いざ驚天動地の事態に陥ったとしても、人々の生活は続くし企業のビジネス活動もいっときとして止まることはない。つまり、しっかり長期投資しておけば、何とでも乗り切れる。

草刈 まさに人の営みとともに生きる長期投資であれば、目の前の変化ではなく悠久の大河を流れるごとく進めることができます。

澤上 そういった長期投資の良さを多くの人が身に染みて分かった時点では残念ながらもう遅い。この記事の読者だけでも、今すぐ行動してもらいたいよね。

澤上篤人
1973年ジュネーブ大学付属国際問題研究所国際経済学修士課程履修。ピクテ・ジャパン代表取締役を務めた後、96年あえてサラリーマン世帯を顧客対象とする、さわかみ投資顧問(現さわかみ投信)を設立
草刈貴弘
2008年入社。ファンドマネジャーを経て13年から最高投資責任者(CIO)

[日経マネー2019年9月号の記事を再構成]

これまでの「カリスマの直言」の記事はこちらからご覧ください。

日経マネー 2019年 9 月号

著者 : 日経マネー編集部
出版 : 日経BP
価格 : 750円 (税込み)


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