何が難しいの? 日本人がつかまえにくいhardの意味デイビッド・セイン「間違えやすい英語・聞き手編」(11)hard

【日本人の心の中】
Actually, it's a little hard.って「実は、それは少し難しい」という意味でしょ。この場合のhardが「かたい」ではないことぐらいは知ってるよ。学校でit is hard to doが「~するのは難しい」の構文だと習っているし。で、ここで言っているのは、きっと「この企画を実行するのはやや難しい」という意味なんだろうな。

もともとユウカとしては、困難を伴うけどやりがいのある企画を立てたつもりでしたので、難しい企画だと評されるのは想定内。「自分たちの力を試すのはいいことだ」と言い返します。しかし早合点は禁物です。ここでのhardは違う意味にも受け取れますので、聞き手としては、まずは相手の言わんとするところを読み取ろうとする心がけが大切です。

解釈の一つとして、hardは「難しい」ではなく、実は「かたい」を意味するのだと想定できます。「かたい」と言っても物質の硬さではなく、「文章が硬い」ということです。英語のhardは、文体が硬い、つまり言葉の表現が堅苦しいことも表します。ユウカの提案書を読もうとしたスティーブが、文章がこなれていないのを見て、読んでゆく気をなくした可能性が考えられます。だから彼は、読んだかどうかを聞かれたときに、I triedと言ったのかもしれません。これは「やろうとした(が、できなかった)」のニュアンスだからです。もしそうだとすると、it's a little hardは「この提案書の文体はちょっと堅苦しい」の意味で受け取れるでしょう。

あるいはまた別の解釈もできます。そもそもユウカの書いた英語に間違いが多く、読み進めること自体ができなかったという可能性です。この場合のhardは、同じ「難しい」の意味でも、「企画を実行するのがやや難しい」ではなくて「企画書を読むのがちょっと難しい」ということになります。ここで言う「ちょっと難しい」は、要するに「できない」を遠回しに伝えているのです。すぐあとにスティーブがI can barely understand what it says.(意味がほとんど理解できない)と言っていることから、こちらの解釈のほうが正しそうです。とはいえ、このbarelyは「かろうじて~する」の意味合いで言われることが多く、ユウカが「意味はなんとか理解できるけど」と肯定的に受け取ったため、ますます会話がすれ違ったのでした。

さらに掘り下げたいhardとその関連表現

(1) 形容詞

A: I don't understand Jim. ジムのことが理解できません。

 B: Yeah, he's a hard nut to crack. ええ、扱いにくい人ですね。

*a hard nut to crack:扱いにくい人物。直訳すると、かたくて割りにくい木の実ということですが、比喩として手ごわい相手のことを言います。人だけでなく「難題」を指すこともあります。

We managed to get the contract, but it was a hard sell. なんとか契約にこぎつけたが、強引な売り込みだった。

*hard sell:しつこい販売。「押し売り」といったようなニュアンスです。hardは「激しい」「猛烈な」といったことも表し、この意味で使われる表現です。

今こそ始める学び特集
ブックコーナー ビジネス書などの書評はこちら
今こそ始める学び特集
ブックコーナー ビジネス書などの書評はこちら