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米国ではありえない? ハンバーグ、日本独自の進化

モンゴルからドイツに伝わったタルタルステーキ。同様のものが朝鮮半島に伝わったのがユッケだという

合理的といえば、冒頭で紹介した夫が仕切ったBBQではまな板も包丁も使わず、ひき肉をこねるボウルも不要だった。スーパーで買ってきたトレイからひき肉を手にとって丸め、網に乗せただけ。作る工程もシンプルだし、ハンバーガーを載せる皿さえも不要で、洗い物がほぼないことに気づいた。

前出の土方さんによれば、米国では「季節のいい時期は、休日だけでなく、夕食は毎日バックヤードのグリルで調理する方もいます。肉を焼くのは男性がほとんどで、女性はサイドディッシュのサラダなどを担当しています」とのこと。米国のBBQ定番メニューにハンバーガーが選ばれているのは、ほぼ毎日のことだけに調理の簡単さや片付けのラクさが好まれているのかもしれない。

さて、ハンバーグが日本で最初に公に紹介されたのは明治15年(1882年)。赤堀料理学園の前身、日本初の料理学校である赤堀割烹教場の開校記念の式典でふるまわれたとのこと。

「初代校長の赤堀峯吉がどのようにハンバーグに出合ったのかは定かではありません。ただ、料理学校の前に料理店をやっていて、そこのお客様がセレブな方々だったので、西洋料理についても知識があったのではないかと推測されます」と語るのは赤堀料理学園第6代校長で日本フードコーディネーター協会常任理事の赤堀博美さん。

日本のハンバーグの特徴は卵やパン粉などの「つなぎ」が入ること

当時のレシピは、タマネギこそ入るものの、小麦粉などの「つなぎ」を使わないものであったとか。

「肉には塩を加えてこねることで結着する、つまり肉と肉がお互いにくっつく性質があります。ですので、『つなぎ』がなくてもパティになります。現在のようにハンバーグにパン粉や小麦粉を入れるようになったのは肉と肉をつなげるというよりも『かさ』を増やすためではないかと思います。牛肉だけでは価格も高いので、ほかのものを入れて安くて食べやすいようにしたのではないでしょうか」

日本では合いびき肉が使われることが多い理由についても聞いてみた。

「日本で肉を食べるようになったのは明治5年から。明治15年の開校記念日にハンバーグを炭火で焼いたときにも近所から『臭い』と苦情が来たそうです。そのくらい当時の日本ではまだ肉食に抵抗がありました。そこで臭みの少ない豚を混ぜたのではないかと思います。また、豚肉を加えたほうがジューシーでうま味が増えておいしく感じたのかもしれないです」

豚肉にはうまみ成分として知られる「イノシン酸」が牛肉よりも多い。臭みを消してうまみを増すための工夫として合いびき肉が生まれたのだろう。

牛肉100%にこだわらない「かさ増し」の精神は豆腐ハンバーグなどのアレンジを生み出した。ソースもトマトやウースター、デミグラスなどのほか、おろしポン酢や照り焼きなどバリエーションも豊富だ。もはやハンバーグは「和食」と言えるのかもしれない。

(ライター 柏木珠希)


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