まるで漫画「寄生獣」 ハリガネムシの恐るべき一生神戸大学 群集生態学 佐藤拓哉(2)

2019/8/16

「研究室」に行ってみた。

ナショナルジオグラフィック日本版

文筆家・川端裕人氏がナショナルジオグラフィック日本版サイトで連載中の「『研究室』に行ってみた。」の転載を始めました。川端氏が最先端の研究室を訪れ、じっくりと研究内容を深掘りする人気コラムです。今回は、不気味なのに目が離せない寄生虫がテーマ。探究心が高まる夏休みシーズンにぴったりです。

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宿主を操り、自らに都合のよい行動を取らせる寄生虫がいる。聞いただけで気持ち悪いが、そんな寄生虫であるハリガネムシと宿主の異常行動を、森と川の生態系の中に位置づけて研究し、次々と成果をあげている佐藤拓哉さんの研究フィールドに行ってみた!(文 川端裕人、写真 的野弘路)

ある意味、強烈な存在であるカマドウマと森で出会った。

その森に招いてくれた神戸大学の佐藤拓哉准教授は、「僕の研究室はフィールド」という生態学者であり、「我が研究のフルコースを味わってください」とばかりに、森の中の「好奇心のレストラン」に導いてくれた。そして、こってりと味わい深くカマドウマについて語ってくださった。

しかし、それは前菜。

今回は、主菜に登場いただく。

カマドウマに寄生するハリガネムシだ。

かなり嫌われ者昆虫であるらしいカマドウマで嫌な気分になった方には申し訳ないが、さらに衝撃的かもしれない生き物である。

この時期に水辺で出会うカマドウマは、腹の中にハリガネムシを養っている可能性がある。しかし、実際に水に飛び込んで、ハリガネムシが出てくる瞬間に出会うには運が必要なので、ここはすでに脱出した後のハリガネムシを探すことにした。

水の中でゆらゆら細長いものが揺れていたり、蠢いていたりするのを、注意深く見ていく。動いているものを見つけやすい水たまりに目を凝らしたり、たも網で小魚などを捕るいわゆる「ガサガサ」の要領で水中の枝や葉をすくいあげたりしつつ探した。

4つめか、5つめかの水たまりで、とうとういた。

ハリガネムシとはよく言ったもので、体長30~40センチ。その名の通り非常にハリガネっぽい。表面はクチクラでできており、甲虫の体表面に似たかんじでもある。

しかし、なんというか。

水中でクネクネしているのを見るとどきっとするし、陸上にあげて蠢いているのを見ても非常に異質な生き物だ。