踏み間違い防止装置試してみた 音や表示で誤発進警告
車の誤発進による痛ましい死亡事故が、高齢運転者を中心に続発している。運転免許返納以外で事故を防ぐ方法として最も手軽で現実的なのは、市販品や自動車メーカーの純正商品として数が増えている後付けの誤発進防止装置の装着だろう。今手に入る代表的装置をテストした。
高齢者が関係した死亡事故の要因は操作ミス
高齢運転者による事故のニュースが多い今日、交通社会も高齢化に直面していることを実感する。75歳以上の高齢者が関係した死亡事故の最大の要因は、操作ミスなのだ。アクセルとブレーキのペダルの踏み間違いが典型的な例である。
踏み間違いが要因の死亡事故の割合は、74歳以下の1.1%に対して、75歳以上は5.4%に跳ね上がるというから驚く。実は踏み間違い事故は24歳以下も高めなのだが、これは運転そのものにまだ不慣れなことが原因とみられる。この操作ミスを抑止できれば、それだけ多くの事故を未然に防げることになる。
車自体に衝突被害軽減ブレーキを組み込んだ「サポカー」と称される新型車への乗り換え以外で、最も注目されている対策は、後付けの「ペダル踏み間違い時加速抑制装置」の活用だ。発進や停車など低速域のときに急ブレーキをかけようとして、誤ってアクセルを強く踏んだ際に作動する装置だ。装置がペダル操作を誤りと認識し、加速を抑制するとともに、音や表示で運転者に操作ミスを警告する。
あくまで加速を抑える機能であり、クルマを止めるものではない。それでもクルマが急な動きをすることがなくなるので、ペダルの踏み直しなど冷静な回避動作が取りやすくなる。
今回紹介する4つの後付け型の加速抑制装置は、いずれも発進時に急にアクセルを踏み込んだ操作をしたときに、急加速を抑制する機能を発揮する。仕組みは大きく2つに分けられる。
市販品の「ペダルの見張り番2」と「誤発進防止システム2」は、チューニングすることで誤ってアクセルを踏み込んだかどうかを調整するタイプ。前者は5段階で調節、後者は取り付け時に運転者のペダル操作の癖を学習させる。比較的手ごろな価格で、国産の幅広い車種に取り付け可能な点がメリットだ。
一方のメーカー純正品は、障害物を検知するセンサーと連動するタイプ。急な踏み込みをすべて抑制するわけではなく、進行方向に障害物が無ければそのまま加速する。高速道路の合流や急な坂道での発進など、アクセルを意図的に踏み込みたいときには動作しないので、誤発進をより厳密に防ぐという利点はある。ただ、市販品にも機能をオフにするスイッチがあるので、市販品だからといって困ることはなさそうだ。
実際に4つを試してみたが、いずれも条件下ではしっかりと作動し、大きな違いは感じなかった。通常のアクセル操作ではスムーズに発進できるが、一気に床までアクセルを踏み込むと加速抑制機能が作動。クルマはクリーピングの速度でしか進むことができなくなる。
効果あるのは発進と停車時
さらに車内には高音の警告が鳴り響くので、異常事態が起きたことをすぐ認識できた。高齢者の事故は駐車場などで最も起きやすいため、発進時の誤操作の多くはこれで防げそうだ。どの機種もブレーキをかける機能はないので、警告音が鳴ったら、停車するために速やかにアクセルからブレーキに踏み替えることは必要だ。
ただし"弱点"もある。運転時に急ブレーキを踏もうとして、間違ってアクセルを思い切り踏んでしまう……。こんな状況では、残念ながら抑制装置は働かない。あくまでも発進と停車時の低速域に限定した装置であることは知っておくべきだ。
2009年、ボルボXC60が被害軽減ブレーキを日本に初導入して以来、国産車にも被害軽減ブレーキが徐々に普及。様々な先進安全運転支援機能が開発され、今や新型車では当たり前の装備になりつつある。しかしその恩恵に浴すためには車の買い替えが必要。すぐできる対策としては後付けの加速抑制装置の装着が早道だろう。日経トレンディ9月号では安全機能搭載車(サポカー)の最新リストも掲載している。
(日経トレンディ9月号から再構成 文・大音安弘)
[日本経済新聞夕刊2019年8月10日付]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。