13人に1人はLGBT 職場で知っておきたい8つのこと

日経ウーマン

【7】LGBTQのハラスメント最新知識を身に付けよう

2014年7月、男女雇用機会均等法指針改正により、異性間以外に同性間での言動もセクハラに該当するようになったが、「近年、問題視されているのは、性的マイノリティーに対するSOGI=ソジハラです」と伊藤義博さん。

「SOGIとは、性的指向(Sexual Orientation)と、性自認(Gender Identity)の頭文字から取った言葉で、好きになる性や心の性に関することをからかいの対象にすべきではない、という傾向が強まっています。何がハラスメントに当たるのかを学ぶことは、今や身に付けるべき『ビジネスマナー』です」

また、社会学者の水無田気流さんは、「日本は性的な問題に関して『無自覚』」と指摘する。

「欧米のようにカップル強制文化を持たない日本は、一見、性の問題に寛容に見えますが、単に『無自覚』で『無関心』ともいえる。そのため、気づかないうちに性的マイノリティーの人たちのタブーに触れ、相手を傷つけてしまう可能性もあります。性の問題は相手の尊厳に関わるので、低俗な問題と考えないで」

どんな表現がハラスメントに当たるのかを知っておこう。「カミングアウトしている人がいないからといって、その場にLGBTQの人々がいないとは限りません。『見えなくても必ずいる』という意識を持って発言を。LGBTQ差別のない職場になれば、女性はもちろん、そのほかのマイノリティーの人にとっても働きやすい職場になるはずです」(村木さん)

■初対面で気を付けたい言葉
周囲にいる人がLGBTQの可能性があることを、念頭に置いて接する意識を持つこともポイント。「特定の性別を表現する言葉を使ってはいけないというわけではない。初対面では気を付けたほうがいい、という意味です。接客時など、相手が性別や関係性をご自分で表明されたら、その言葉を使えばいいと思いますよ」(村木さん)。

・彼/彼女→恋人、パートナー、付き合っている人
・夫/妻→配偶者、連れ合い、パートナー
・旦那様/奥様→お連れ合い
・男らしい/女らしい→○○さんらしい
・男性/女性→○○さん、青シャツの方など
【8】職場内に理解者(アライ)がいるだけで、当事者は励みになる

LGBTQの人たちが働きやすい職場環境とは、どういうものだろう。「職場で仲間がいると、勤続意欲が高まるというデータがある。これは、職場内に1人でも理解者=アライがいることで、当事者の心理的な安心感が高まり、働く意欲に影響することを意味します」と村木さん。「アライ」とは、英語の同盟者=Allyが転じた言葉で、LGBTQに対する理解者や支援者のことを指す。では、何から始めればいい?

「『知る→表明する→行動する』の3ステップで、『アライ』の意識を深めて。まずLGBTQについて学び、自分がアライであることを情報発信して周りに示す。その上で、社内の啓発活動や研修に参加するなど行動を。できることから始めてみて」

また、LGBTQの人々と触れ合う機会を増やすことで、理解を深めるのも良い方法だという。「ぜひ関連イベントに足を運んでほしい。一緒にスポーツをするなど、一体感の持てるものがオススメです」

気を付けたいのが、「LGBTQをひとくくりに考えたり、決めつける発言をしたりしないこと」と石田さん。「違いがあり、抱える悩みや課題も異なります。カミングアウトを強制するなど、無理に心をこじ開けるような態度は控え、気持ちに寄り添う姿勢を持つことを心がけて」

この人たちに聞きました

伊藤義博さん(左)とリサーチャーの吉本妙子さん
伊藤さんは電通ダイバーシティ・ラボ代表。吉本さんはリサーチャーを務める。
村木真紀さん
虹色ダイバーシティ 理事長、社会保険労務士。1974年生まれ。京都大学総合人間学部卒業。会社員を経て現職。LGBTに関する調査研究を行う。共著に『職場のLGBT読本』(実務教育出版)、『トランスジェンダーと職場環境ハンドブック』(日本能率協会マネジメントセンター)。
水無田気流さん
国学院大学経済学部教授。1970年生まれ。詩人、社会学者。早稲田大学大学院社会科学研究科博士後期課程単位取得満期退学。著書は『「居場所」のない男、「時間」がない女』(日本経済新聞出版社)、詩集『音速平和』『Z境』(共に思潮社)ほか多数。
石田 仁さん
日工組社会安全研究財団主任研究員。1975年生まれ。中央大学大学院文学研究科博士後期課程修了、博士(社会学)。現在、成蹊大学、和光大学非常勤講師も務める。著書に『はじめて学ぶLGBT』(ナツメ社)など。

(取材・文 樋口晶子/西尾英子、監修 村木真紀=虹色ダイバーシティ理事長)

[日経ウーマン 2019年4月号の記事を再構成]

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