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働き盛りを襲う若年性認知症 周囲の支援が最高の治療

日経Gooday

2019/8/30

写真はイメージ=(c)ronnarong thanuthattaphong-123RF
日経Gooday(グッデイ)

65歳未満で発症する認知症を「若年性認知症」という。発症する人の多くは職場や家庭で重責を担う現役世代であるために、就労や生活に大きな影響が出る。ただ、認知症になってもすべてのことができなくなるわけではない。発症してからも人生は続く。周囲の力を借りながら、長期的な人生設計を見直すことが大切だ。

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建築会社で働く男性社員のAさん(50歳)はある時から、仕事上のミスが増えてきた。顧客との面談の約束をすっかり忘れてしまうことや、必要な書類を期限までに提出できないことなどが何度か続いた。さらに、社内の会議に出ると、以前まで知っていた専門用語が理解できなくなっていた。当たり前のように専門用語を駆使して議論を重ねる同僚や部下たちの姿を見ながら議論についていけない自身の姿にぼうぜんとしたAさん、1カ月ほど悩んだ末に思い切ってもの忘れ外来を受診した。

検査の結果、出された診断は「認知症」。Aさんには家のローンがあり、子どもも大学受験を控えている。田舎の親の介護も必要になりつつある。夫が認知症と診断されたことで奥さんもショックを隠せない。どうすればいいのか、とAさんは途方に暮れた。

■平均発症年齢は51歳 現役世代ならではの問題が多い

認知症は高齢者に多い病気であり、認知症のリスク因子にも「加齢」が挙がるほどだ。しかし、65歳未満で発症する若年性認知症は一定数存在する。約10年前の調査だが、全国の若年性認知症の人の数は約3万7800人(2009年厚生労働省発表、最新のデータは2020年に公表予定)。認知症高齢者の約462万人(2013年3月:厚生労働科学研究報告書「都市部における認知症有病率と認知症の生活機能障害への対応」)に比べれば、非常に少ない。

とはいえ、若年性認知症の平均発症年齢は51.3歳で、Aさんのように一家の大黒柱であり、老親の介護にも対応しなければならず、職場においても管理職に就いている人も多い。いろいろな意味で責任世代の発症だけに、周囲への影響は大きい。

若年性認知症の原因となる病気の顔ぶれは、血管性認知症、アルツハイマー病、前頭側頭型認知症、レビー小体病などで、高齢者の認知症と同じ。一部には家族性アルツハイマー病など遺伝性の認知症が入っている可能性があるが、その多くは原因がよく分かっていないために、予防することも難しいのが現状だ。

若年性認知症が発症する世代は、心身の変わり目を経験する世代でもある。「おかしい」と感じても、ストレスやうつ病、女性の場合は更年期障害などと混同され、正確な診断が遅くなるケースも珍しくない。

■発症しても人生は続く まずは支援者に相談を

10年ほど前から若年性認知症の人やそのケアをする家族の支援にあたってきた「若年認知症ねりまの会 MARINE」の代表、田中悠美子さん(立教大学コミュニティ福祉学部福祉学科助教)は、若年性認知症は高齢者の認知症と同様、様々な症状を伴い、個人差も大きいと指摘する。特に初期のうちは調子の悪い時もあれば、良い時もあるなど波もあり、「難病だと感じるほど苦慮することがある半面、風邪のように普通の病気だと感じることもある。どのように捉えるか、個々の状況を受け止めながら、いまだに揺れ動いている」と話す。

一つ言えるのは、発症したからといって、すぐに何もできなくなる病気ではない、ということだ。それどころか、職場や周囲の少しの配慮で就労を継続している人たちもいる。「ある方は、頭脳が疲れやすくなったことを上司や同僚に相談し、こまめに休憩の時間を設けて、体調を整えながら仕事を続けている。記憶力が低下しても、体を動かすと実務は覚えていて、発症前と同様の業務を行っている人もいる」(田中さん)

若年性認知症は男性に多いが、男性の自我は仕事に結びついていることが少なくない。認知症という診断で仕事内容の変更や失業などを余儀なくされると、それが原因で社会とのつながりを断ってしまうことも多い。こうした状況は、本人にとっても良いことではない。

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