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10万年前の東アジア最古の彫刻 旧人類にも芸術家?

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ナショナルジオグラフィック日本版

中国東部で見つかった10万年以上前の動物の小さな骨片。それに刻まれた直線が今、古人類学者の間に波紋を広げている。意図的に彫られた抽象的な線としては、東アジアで最古の可能性があるからだ。2019年7月8日付けで学術誌「Antiquity」に発表された論文の内容が確かなら、これまで6万年前とされていた記録が打ち破られたことになる。

彫刻の作者がヒトの系統樹のどの枝に属していたのかはまだわからない。しかし、骨片の近くで見つかった頭蓋骨の化石は、種は不明ではあるものの、現生人類のホモ・サピエンスではなかったことを示唆している。

「考古学の発掘は謎だらけです。何が見つかるのか、あらかじめ知ることは不可能です」と論文の筆頭著者である中国、山東大学の李占揚氏は言う。「目に見えないほど小さなものが人々の理解を一変させることもあります」

現時点では、今回報告された線刻模様が何のために描かれたのかも、本当に何かの表現なのかもわからない。だが、私たちの古い親戚が故意に平行線を描いたことからは、彼らが複雑な行動様式や、自然との関係を持っていたことがわかる。今回の研究は、抽象的にものを考えられるヒト族(ホミニン)が、私たちホモ・サピエンスだけであるという時代遅れの観念に、さらなる異議を投げかけるものでもある。

「非常に面白い研究です」と米ウォルデン大学の考古学者レスリー・バン・ゲルダー氏は言う。「模様の意味を知る必要はありません。それを製作した人にとっては意味があったということさえ知っていればよいのです」

故意に刻んだ証拠

問題の骨片が見つかったのは、河南省の霊井遺跡だ。論文の共著者であるフランス、ボルドー大学のフランチェスコ・デリコ氏は、この場所にはかつて泉があり、動物や、それを狙うヒト族が集まっていたようだと話す。

発掘された動物の骨片は何千点にも上り、ウマや野生では絶滅したウシ(オーロックス)、ロバなどの骨が含まれていた。多くの骨は、新鮮なうちに切断されていた。狩りがうまくいっていた証拠だ。また、この遺跡から出土した石器は、驚くほど洗練された方法で作られていたことが明らかになっている。

これらの化石を調べていた研究者らは、2016年、さらに興味深いものを発見する。彫刻だ。

何らかの意図をもって線が刻まれたとみられる、大人の親指ほどの骨片が2つ出土した。そこで研究チームは、刻まれた溝の形と配置を慎重に分析した。すると、肉を食べるために動物の死体を解体する際にできる跡とは、いくつかの点で違っていることが明らかになった。

まず、溝はかなり浅く、古くて硬くなった骨に彫り込まれていたことを示していた。また、溝は骨のくぼみにも刻まれていた。つまり、肉を切るのによく用いられていた長い刃の石器ではなく、鋭くとがった石の先端で彫っていたようだ。

この溝を刻んだヒト族に関する数々の詳細も明らかになった。たとえば、線の非対称性と彫り込みの方向から、おそらく右利きだったことがわかった。また、石器の先端が削れて丸くなってきたように思われる場所では、同じところを何度もなぞったらしく、ほぼ重なる線が何本も刻まれていた。

おそらく最も決定的だったのは、1つの骨片の顕微鏡画像で見つかった赤い色の残留物だ。化学分析の結果、この残留物には微量の酸化鉄が含まれていたが、奇妙なことに骨片の反対側では見つからなかった。すなわち、顔料は偶然に付着したものではないということだ。むしろ、骨片に刻んだ溝を目立たせるために、鉄を多く含むオーカーという黄土色の粘土をわざと溝に塗り込んだ可能性が高い。

彫ったのは誰?

骨片の表面に刻まれた数本の直線など、たいした発見ではないと思うかもしれない。しかし、「重要なのは線そのものではなく、わざと線を刻み込んだ意図にあるのです」とバン・ゲルダー氏は説明する。これらの線は、古い骨の表面を石器ででたらめにこすってできた傷ではなく、何らかの考えをもって彫り込まれたものだと氏は言う。

しかし、誰がこの溝を彫ったのかについては、まだ謎に包まれている。ネアンデルタール人は、おそらくアジアのこれほど東の方までは来なかった。現時点でネアンデルタール人の進出が確認されているのは、今回の発見場所から北西に約3000kmも離れたアルタイ山脈のデニソワ洞窟までだ。そして、これほど早い時代に、現生人類がこの地に到達していたかどうかもわかっていない。

遺跡で発見された頭蓋骨には、古い特徴と新しい特徴の両方が見られる。以前の研究は、彼らがデニソワ人だった可能性を示唆していたが、今までに見つかっているデニソワ人の化石は数少ないため、断定するにはDNAの証拠が必要だろう。また、デニソワ洞窟で発見された歯のペンダントなどの装身具は、デニソワ人によって作られた可能性があると主張する研究もある。しかし科学者たちはまだ、現生人類がこれらの製作に関与した可能性を否定できずにいる。

「純粋なホモ・サピエンスではなかった」

そうした物質文化を作り出す能力をもっていた人々について、「私の考えでは、純粋なホモ・サピエンスではなかったと思います」と言うのは、米ウィスコンシン大学マディソン校の古人類学者ジョン・ホークス氏だ。「実のところ、『純粋』なものなどないに等しいのです」。なお、ホークス氏は今回の研究に関わっていない。

科学者が古代のヒトを調べれば調べるほど、種間の交雑が見えてくるようだ。遺伝学的な証拠が示すのは、約6万年前から数回にわたってアフリカを出た現生人類が、移住先でヒト族の仲間と出会い、少なくともそのうちの2種、ネアンデルタール人とデニソワ人と交雑したことである。そのとき遺伝子のやりとりと同時に、文化的な交流もあっただろう。

「彼らは自分たちのことを別々の種だとは思っていなかったでしょう」とホークス氏は言う。近年、さまざまな種の人類が残した古代の彫刻やオーカーで描いたスケッチが世界各地で発見されており、今回の発見もその一例に加わることになる。

現在知られている中で最古のアートは、インドネシアのトリニールで発見された、イガイの貝殻に刻まれたジグザグ模様で、約54万年前にホモ・エレクトスが彫ったと考えられている。また、南アフリカのブロンボス洞窟で見つかった「#」のような印は、7万3000年前に初期のホモ・サピエンスが描いた落書きだったようだ。そして、スペイン南東部の洞窟クエバ・デ・ロス・アビオネスで発見された6万5000年前のスケッチをオーカーで描いたのは、おそらくネアンデルタール人だった。

「現代的に見えるこれらの行動は、現生人類の誕生と直結する結果というよりは、ヒトの仲間が共通して持っていた認知能力の結果だったのでしょう」とデリコ氏は話す。

しかし、これらの抽象的な図形が何を意味するかについては、さらなる議論が必要だとオーストラリア、グリフィス大学の考古学者ジリアン・ハントリー氏は言う。氏は新たな研究を高く評価しているが、今回の標本をはじめ、今までに見つかっている同様の刻線が本当に何かを表現しているのかどうかや、仮にそうだとしてもこれらが高い認知能力の証拠として解釈できるのかどうかはわからないと指摘する。

「ちょっと大風呂敷を広げすぎだと思います」とハントリー氏は言う。それでも今回の発見が、古代の人類の暮らしと、おそらく彼らの心を垣間見せてくれたのは本当だ。

「今後も発見は続くでしょう」とバン・ゲルダー氏は言う。「それが考古学の魅力です。何かがわかったかと思うと、誰かが次のものを掘り出してくるのです」

(文 Maya Wei-Haas、訳 三枝小夜子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2019年7月29日付]

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