0点でも「おまえはやれる」 熊高がくれた自信高浜正伸・花まる学習会代表(下)

午前中にそれぞれ牛乳配達をしてから、生きることや社会の様々な問題をひたすら考え続け、夕方になると2人で激論を交わす。そこからまた10キロぐらい走って、銭湯に入って寝る。こんな日々を1年間、繰り返しました。

このとき、将来は教育か芸術でやっていくという、大きな方向性を決めました。議論の末、「世の中の大問題はすべて人の感性や価値観に起因している」という結論に達したからです。感性や価値観は教育か、その人を芸術で感動させることでしか変えられません。ゴミの問題、差別や宗教対立、すべてが感性に行きつき、これは子どものころの教育でしか変えられない。こうした考えにたどり着いたのが、24歳のときでした。今は当時考えたことを順番に実行しています。

答えは自分の中にある。

実は音楽をずっとやりたくて、一時期はプロを目指していました。農学部でも木材物理という分野で、マリンバやピアノといった楽器に使う木材の物性を研究しました。曲作りには絶対の自信があったのですが、本当に世の中に残る音楽は、黒人のブルースやジャズ、労働者階級のロックみたいに、抑圧されたところからしか生まれないんですよね。中途半端に恵まれた俺には無理だな、と気づきました。

一方の教育でいうと、当時の塾は「有名中学合格」を掲げるところばかり。引きこもりの問題に着目した「メシが食える教育」というのはまだ誰もやっていなかった。アルバイトで塾や予備校の現場に行ってみたら、本当に水が合って飽きない。これは絶対にやれる、と思いました。

今の自分のテーマは、次のリーダーを育てるということです。若くてやる気のある人に社長などの肩書を付けて、資金のやりくりがいかに難しいかなどを経験させています。若い人は、次の世代の感性で育っていくと思うんですよね。そのときに「人を引っ張れる器」のある人材に育ててあげるのが、僕の仕事だろうと考えています。

大きな変化の時代で、5年後がどうなるかも分からない。そういう時代には、常に自分の頭で考え、学んで、発想することが求められます。人生で自分が何をやりたいのか、その思いこそが一番重要で、答えは自分の内側にしかありません。とにかくまず動いて、幅広くいろいろやってみて、どうもこれが合っているな、というのを見つけてほしい。僕が花まるを始めたのは33歳の時です。ここまで遅くなくていいと思いますが、本当にやりたいと思えるものを見つけて自分を磨けば、30歳からでも十分にチャンスはあります。

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花まる学習会
1993年設立。埼玉県川口市の2教室、会員25人で始まった。「生きる力」を育む野外体験などユニークな教育が注目を集め、2019年7月現在、12都府県360教室で約2万人が学ぶ。15年からはグループで音楽教室を始めたほか、佐賀県武雄市で官民一体型小学校の運営に携わっている。

(ライター 高橋恵里)

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