チャレンジ精神の復活めざす ボトムアップで事業創出京セラ 谷本秀夫社長(上)

――リーダーとしてこの経験から学んだことは何でしょうか。

「研究、技術、製造、営業など関係する各部門とのコミュニケーションの大切さです。当時はまだ30歳前後の技術者でしたので、『技術的にうまくいけば事業として成功だろう』くらいにしか思っていませんでした。でも、技術が確立したとしても量産にこぎつけるのは大変だし、量産できたからといって売れるわけでもない。技術だけあっても何にもならないし、営業だけでもどうにもならないのです。私は社長になる前はセラミックの製造部門のことしか知りませんでしたが、京セラの事業全体に目配りできるようになったのはこの経験があったからでしょうね」

積極的にチャレンジしよう

――トップとしてグループ7万人の従業員にいま、何を訴えていますか。

「いま最も力を込めて社員に言っているのは『積極的にチャレンジしよう』ということです。京セラが急成長した時代は、とにかく新製品を次から次へと出さなければならず、チャレンジの連続という風土がありました。しかし、京セラも大企業になり、特に2000年のITバブルのころをすぎると、組織が大きくなりすぎてチャレンジしづらい雰囲気が出てきたように思います」

「もちろん、チャレンジして成功するのが一番良いことですが、京セラにはチャレンジして失敗した人も評価される文化がかつてありました。一番ダメなのは何もしない人、というのが稲盛の教えです。その考えを復活して活気ある会社にしたいと思っています」

「一番ダメなのは何もしない人、というのが稲盛の教え。その考えを復活して活気ある会社にしたい」

――具体的にはどのような取り組みを進めていますか。

「まずはチャレンジできる場をつくらないといけません。まず、生産性倍増に向けて、AIとロボットを活用する部署を設け、生産現場の効率化を進めています。これとあわせて、業務革新プロジェクトも始めていて、若い人が中心になってペーパーレスの会議システムの導入などを進めています」

社内でスタートアップ

「もう一つは、1人のアイデアで新しいものを作り出せる時代ではなくなってきていることへの対応です。例えば、自動運転に使われる認識カメラとシステムを開発する部隊と、モビリティー分野のマーケティングをする組織に横串を刺して新しいビジネスを生むように、マーケティングと研究を1つのセットにして、各部署で関わっているエンジニアを集めて研究を進めようとしています」

「さらに昨年から社内でスタートアップを始めようとしています。800件以上のアイデアが出てきていて、選考で60件くらいに絞り、その中から事業化を検討しています。先行してソニーのスタートアップ支援に応募して、音に合わせてブラシが振動する子ども用の電動歯ブラシを開発しました。最終的な事業化の件数がどれぐらいになるかはわかりませんが、まさにボトムアップで進めています」

谷本秀夫
1960年(昭35年)生まれ。82年に上智大理工学部を卒業後、京都セラミック(現京セラ)に入社。鹿児島県の川内工場を皮切りに約30年間、一貫して京セラの祖業ともいえるセラミック部品の製品開発や生産ラインの立ち上げに携わった。ファインセラミック事業本部長を経て2017年4月から現職。

(福冨隼太郎)

「私のリーダー論」記事一覧

マネジメント層に必要な4つのスキルを鍛える講座/日経ビジネススクール

会社役員・経営幹部の方を対象とした、企業価値を高める経営の実務に役立つビジネス講座を厳選

>> 講座一覧はこちら

今こそ始める学び特集
ブックコーナー ビジネス書などの書評はこちら
今こそ始める学び特集
ブックコーナー ビジネス書などの書評はこちら