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旅・風景

北朝鮮で寝台列車の旅 車窓巡る手つかずの自然と農村

日経ナショナル ジオグラフィック社

2019/8/5

ナショナルジオグラフィック日本版

青々とした風景を横切り羅先に向かう列車(PHOTOGRAPH BY DAVIDE MONTELEONE, NATIONAL GEOGRAPHIC)

英国国鉄の職員だったマーク・ドラン氏。少年時代から蒸気機関車が大好きだった同氏が2018年に選んだ列車は、平壌から北東へ向かって北朝鮮の海岸線を旅する寝台列車だ。外国人が見ることが許されなかった車窓からの風景と人々の生活を、自らも北京から平壌へ赴いてドラン氏の旅に同行したダビデ・モンテレオーネ氏の写真で見ていこう。

◇  ◇  ◇

ドラン氏が参加したツアーは2018年9月に平壌を出発し、ロシアと中国との国境に近い羅先(ラソン)特別市までの鉄道旅を体験した。北京の旅行会社「高麗(コリョ)ツアーズ」によると、1年前まで外国人旅行客には許可されていなかった旅程だという。

北京から平壌へ向かう途中、閑散としたプラットフォームを通過した(PHOTOGRAPH BY DAVIDE MONTELEONE, NATIONAL GEOGRAPHIC)

ドラン氏を含めたツアーの参加者は合計12人。全行程36時間の列車の旅だ。普通は、自由を楽しむために旅に出るものだが、北朝鮮観光は自由が制限される。ツアー客には政府のガイドがピタリとはりつき、監視の目を光らせる。外国人は、体制が見せたいものだけを観光する。

だが、このツアーは、北朝鮮の農村部も通過する列車の旅だ。高麗ツアーズの創業者ニコラス・ボナー氏は、2004年にマスゲームの訓練を積む2人の若い体操選手を追ったドキュメンタリー番組を制作中に、この路線に乗った。その後、国の開発は遅々として進まず、風景は今も当時とほとんど変わっていないと、ボナー氏は語る。

北朝鮮の鉄道は、今も20世紀半ばの旧ソ連の列車を使用している(PHOTOGRAPH BY DAVIDE MONTELEONE, NATIONAL GEOGRAPHIC)

「近代的な建物はなく、手つかずのビーチや小さな入り江が連なる、東アジアでも数少ない美しい海岸線です。貧しくはありますが、この風景には目を奪われます」

列車はかなり旧式だ。「1950年代か60年代の旧ソ連のものでした。それ以来ほとんど変わっていないと思います」。一緒に旅行したブリトン・ルース・クラーク氏はそう語る。「でも車内はきれいですよ。トイレも清掃が行き届き、トイレットペーパーも切れることはありませんでした。コンパートメントも快適で、寝具も清潔。みんなよく眠れたようです」

国際列車の車両と比べると、国内用の車両は「みすぼらしかった」とドラン氏は表現する。クラーク氏は、「今回実際にかかったのは34時間でした。列車での長旅は大変そうに聞こえますが、窓の外には見るものがたくさんありますから、時間はあっという間に過ぎてしまいました」と感想を述べた。

北朝鮮建国70周年を記念したマスゲームに掲げられた金正日前総書記の巨大な肖像画(PHOTOGRAPH BY DAVIDE MONTELEONE, NATIONAL GEOGRAPHIC)

「中央の高地には手つかずの森に覆われた丘や谷が広がり、豊かな自然は世界のどこと比べても引けを取らない美しさです。収穫を待つ畑では、人々が農作業をしていました。ほこりっぽい道を行き交うのは自転車ばかりでしたが、たまに牛に引かれた荷車も見かけました。これが100年前の世界ではなく、本当に2018年なのだと確信させてくれるものはほとんど見当たりませんでした」

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