カマドウマの心を操る寄生虫 ハリガネムシの謎に迫る神戸大学 群集生態学 佐藤拓哉(1)

敷地にトロッコの軌道があり、軌道が通る橋をわたったすぐ先の川縁がトラップのポイントだ。仕掛けは、2リットルペットボトルの容器を途中で切断し、注ぎ口を反転させたもの。中にはカルピス原液とビールを混ぜた濃厚な液体を微量入れておく。佐藤さん秘伝のカマドウマを誘引する魔法のレシピだ。

ペットボトルトラップ

「多い時には、2日放置すると20匹くらい入りますかね。ペットボトルの口が滑りやすいせいか、ほかのものが入らないのでいいんです」

カマドウマを誘因する魔法の液体

実は、カマドウマはトラップを設置する時点でも、周囲にぴょんぴょん跳ねていた。

「夜行性の昆虫なんで、ずいぶん出てきてます。お、大きい、捕まえて!」

カマドウマは素早い。おまけに、どっちに動くのかなかなか読めない。そんな中で、佐藤さんや学生さんは、さすがに慣れたもので、見事に捕獲する。むっちりした体と長い脚をもった成体や、この秋にふ化したばかりらしい子どもを何匹か見せてくれた。

カマドウマ

「いや、実は僕、カマドウマ、苦手なんですよね。でも、研究ですから。みなさん、大丈夫ですか。見るのも嫌やという人もいるので」

佐藤さんはそう言うのだが、実はぼくは、カマドウマは苦手ではない。かなり格好良いとすら思っている。そのように述べると、「本当ですか!」と珍しがられた。佐藤さんが研究でカマドウマとつきあい始めて以降、周囲の反応を見る限り、こういうのは希だそうだ。

「すごい気持ち悪いと言われる人が多いと思います。多分、普通のバッタに比べて足がやたら長すぎて、そのくせ羽がなくて、その分、ジャンプ力がすごいあって、予測不能な動きするからやとか。ゴキブリみたいにちょっと何か体ツヤツヤしてるというか、ヌルヌルしてるというか。今大学の研究室でも飼っていますが、他の教員でも学生でも、来客はすべからく嫌そうな顔してます(笑)」

そうなのか……。

たしかに、漢字で竈馬と書くと趣があるが、別名便所コオロギともいう。てらっとしてむっちりした体。無意味になまめかしい長い後脚。こいつがさささっと家の中に入ってきたりすると、ゴキブリに近いような不快感を抱く人がいても不思議ではない。というわけで、この時点で、うぎゃーと思った人にはごめんなさい。

しかし、今回のフルコースの前菜はまさに、カマドウマである。遠慮せずに質問しなければならない。まず、生物学的にいって、どういう素性の生き物なのか。そこから理解していかないと、今回のお題である寄生虫による行動操作や、それが森と川の生態系の中で持つ意味までたどり着けないのである。

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