
屋号から容易に推測できるが、同店では「鶏」を主役とした1杯を提供。「せっかく東京に店があるのだから、都内の鶏を使おうと思いました。鶏だけではありません。この店では、できる限り東京産の素材を使いたいと考えています」(吉宮氏)と笑う。
「そう決めたら、動くのは早い方が良い。すぐに、都内の養鶏農家に片っ端からコンタクトを取りました。その過程で知り合ったのが、立川の烏骨鶏飼養農家です。もともと、スープの素材に烏骨鶏を使うなど考えもしなかったんですが、調べれば調べるほど、奥が深い鶏だということが分かりまして。結局、烏骨鶏をメインで使おうということになりました」
同店の基本メニューは品名に屋号を冠した鶏清湯系の「鶏びあんそば」。
今最も熱い「鶏清湯」というジャンルを選んだのは、前々から2号店ではこの味で勝負したかったから。「主役は圧倒的に烏骨鶏。それに、都内の農家から仕入れた地鶏のガラからだしを採ったのが『鶏びあんそば』のスープです。今回は鶏という素材をとことん追究したかったので、それ以外は極力使わないようにしました。唯一、カエシに少量の魚醤(ぎょしょう)を用いていますが、風味付け程度の役割です」
スープをひと口すすれば、鶏の豊潤な滋味が鼻腔(びこう)を潤し、味蕾(みらい)を心地良く刺激する。飲み干し際にうま味が更に膨らみ、喉奥に甘美な余韻を残すのが、烏骨鶏ならではの特徴だ。
「八王子を代表する本格派鶏清湯ラーメンと評価されるよう、日々精進していきたいと思います」と、意気込む店主。丼を持ってスープを飲み干す際に聞こえたその言葉に、無上の頼もしさを感じた。