嵐の中の決算発表 底割れ懸念は?(苦瓜達郎)三井住友DSアセットマネジメントシニア・ファンドマネージャー

写真はイメージ=PIXTA
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「恐れていた底割れの兆しは今のところは見えないが…」

上場企業の2019年4~6月期決算がたけなわの中、株式市場が荒れています。米中貿易戦争の行方が混沌とし、企業も慎重な業績見通しを立てざるを得ません。この決算発表でのポイントは、実体経済がどこまで低水準なのかを見極めることだと思います。

昨年後半からの減速があまりに急だったため、19年1~3月期については在庫調整や受注消化、利益づくりやウミ出しなどの要因が交錯し、表面上の数字が実力以上なのか、それとも実力以下なのか、それすら判然としない混乱した状況にありました。

4~6月期については、収益の実力値を見極めるとともに、新たなマイナス要因が浮上してこなければ第2四半期以降の減益率縮小に期待をかけられる期だと言えます。

極端な悪化は見られず

現在のところ、従来予想を下回る企業のほうが上回る企業より若干多いようですが、極端に実体経済が悪化している印象は受けません。会社側が期初に立てた通期予想の上方修正こそほとんどありませんが、慎重な期初予想を上回るペースで業績が進捗している企業はかなりの数、存在しています。

堅調なソフト業界

業種別で最も堅調さが目立つのは、企業向けのソフトウエア業界でしょう。もともと景気遅行型の業界であることに加え、ほとんどが内需のため国際経済混乱の直接的な影響をあまり受けません。顧客の人手不足や技術の進歩によって新たな活用法が広がっていることから、依然として好況が続いています。

もっとも、人手不足は追い風であると同時に、業界内部における人手不足も深刻で、成長の制約も見受けられます。また、人手に頼らないビジネスモデルの企業は大半が既に株式市場において極めて高く評価されていることから、業界全体として投資魅力が高いかどうかは疑問です。

問題の半導体関連は?

最も懸念されていた半導体関連についてはどうでしょう。現時点の印象は「思ったほど悪くない」というところです。製品の最終需要にかかわらず、先端的な回路微細化や工程の清浄化については、積極的な投資を行っている顧客が存在するもようです。

もっとも最終需要に関しては、楽観的な論者が唱えていた今年下半期の回復がかなり困難になってきたこと、足元の投資や材料の荷動きに関しては、米国や日本の輸出規制措置に伴う、前倒しや仮需も含まれていると考えられることから、手放しで安心するわけにはいきません。

予想以上の厳しい業界は…

逆に、予想以上に厳しいのが自動車電装関連の企業です。自動運転支援システムの普及を背景に成長していく業界とみられていましたが、特に採用率の高い欧州の自動車業界が混迷を極めていることもあり、一時的に需要は伸び悩んでいます。成長に向けて先行投資を行っている企業がほとんどのため、需要減速は収益性に大きく響きます。中長期的な成長分野であることは変わらないと思いますが、投資のタイミングはかなり難しいといえるでしょう。

全体的に見て、大きく市場を押し上げるようなプラス要因はないように感じます。しかし、恐れていた底割れ的状況もほとんど見られません。半導体関連を中心に、比較対象である前年の第1四半期の業績が突出して好調だったため、今後のハードルは切り下がっていく見込みです。業績堅調にもかかわらず割安な企業を個別に選択するには悪くない状況ではないでしょうか。

プロのポートフォリオは運用に精通したプロが独自の視点で個人投資家に語りかけるコラムで、原則火曜日掲載です。
苦瓜達郎
三井住友DSアセットマネジメントシニア・ファンドマネージャー。1968年生まれ。東京大学経済学部卒業後、91年大和総研入社。アナリストとして窯業やサービス業の担当を経て中小型株を担当。2002年に当時の大和住銀投信投資顧問入社。中小型株ファンドの運用に携わる。