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上司には働き手のマインドを見極める姿勢が求められる。画像はイメージ=PIXTA

上司には働き手のマインドを見極める姿勢が求められる。画像はイメージ=PIXTA

「女性活躍応援」の看板が上がって久しいが、現場のマネジメントは育児休業や復職を織り込んだキャリア形成を応援しきれていないようだ。『フルキャリマネジメント』(東洋経済新報社)を書いた武田佳奈氏は「現場のマネジャーが個々に判断、対応するのは厳しい」と、企業、社会ぐるみでのしくみづくりを促す。女性に限らない、ライフイベントを経験しながら、パフォーマンスを高めていく働き方を聞いた。

ライフイベントにもキャリアにも前向き

武田氏の肩書は野村総合研究所未来創発センターの上級コンサルタントだ。2004年に入社して、2児を育てながら、同研究所で働き続けている。自らの経験を踏まえて、15年に「今後、企業で働く女性の中に、出産や子育てにも前向きでありながら、自身のキャリア形成にも前向きな『フルキャリ』が増えてくる」と発表した。この予言は5年を待たずに、的中しつつある。本書はフルキャリ志向の広がりと、彼女たちの意識を、豊富な調査で裏付けている。

野村総研が提唱する「フルキャリ」とは、「暮らしにも子育てにも、仕事にもキャリアにも、意欲的に取り組みたいと考える働き手の総称」だ。これまではキャリアを優先する「バリキャリ」か、プライベートを重んじる「ゆるキャリ」かの「二者択一」というイメージがあったが、その選択肢の狭さ自体が女性の仕事パフォーマンスを邪魔してきたともいえる。

だが、新たに提唱されたフルキャリは、武田氏にいわせれば、「目指すものではない」のだという。従来の二者択一に、「第3の道」を示したかのように受け取られやすそうだが、「幅広いグラデーション(濃淡)のある、別の価値観を示したにすぎない」という。キャリア選択では先人をロールモデルに選んで、その軌跡を後追いするようなパターンが珍しくないが、ライフイベントは人それぞれ。事情も意欲も異なる誰かの足跡をなぞるのは、必ずしも自由な選択ではないだろう。

表面的な気遣いはかえって邪魔に

「女性に、『無理しないで』という上司は、なぜ嫌われるか」という、書籍帯の言葉は書き手の問題意識を示す。出産や子育てといったライフイベントを迎えた女性の部下に、上司はつい、「お迎えには間に合うの?」「早めに切り上げていいからね」といった、表面的には気遣いを示すような言葉をかけてしまいがちだ。

しかし、「働き手のマインドをきちんと見極めて、言葉を選ばないと、本人が望まない処遇になりかねない」と、武田氏は型通りの上司的ふるまいに、もう一段の心配りを求める。キャリアをしっかり積み上げていきたいという希望の強い部下の場合、上司の「良かれと思って」は、時として逆効果を生む。「無理しないで」は誰にでも使える万能ワードではないのだ。

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