AI投信、苦戦目立つ 「新局面」対応に課題

人工知能(AI)を投資判断に活用し、有望銘柄を探そうとする投資信託が増えてきた。高収益を期待した個人投資家の資金を集めたが、足元の成績はいまひとつだ。なぜなのか。

日興リサーチセンターが、AIを投資判断に活用して株式に投資する国内販売のアクティブ投信(為替ヘッジなし)15本のうち、6月末時点で設定から1年以上たった投信10本を対象に直近1年間の基準価格(分配金再投資ベース)の騰落率を調べたところ、全ての投信がマイナスだった。株価指数に大きく負け、不振が目立つ。

日本を除く先進国の株価の動きを示す「MSCIコクサイ指数」(配当込み、円ベース)は5%のプラスだったのに対し、「GSビッグデータ・ストラテジー(外国株式)」は3%のマイナスだった。同じように設定から1年経過した日本以外の世界株に投資する投信53本のうち、同ファンドの成績は45位と低い。

同ファンドなど複数のAI投信を運用するゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントはAI投信の不振について「今春は米国大型株で株価の割安度や経営の質を評価する視点が運用成績につながらなかった」と説明する。

「AI(人工知能)活用型世界株ファンド」(アセットマネジメントOne)のほか、新興国株や欧州株に投資するAI投信の成績も振るわなかった。

AI投信は膨大な量のデータを読み込み、多面的に分析して魅力的な銘柄を抽出する手法を用いることが多い。企業の業績や財務、株価情報、人間ならば読み切れないような量のアナリストリポートや、衛星写真から読み取れる物流動向なども分析の対象にする。

ところがAIにも弱点があったようだ。ファイナンシャルプランナーの深野康彦氏は「過去のデータを基に投資判断するAIが、過去にない性質の相場環境の大きな変化にうまく対応できなかったのではないか」とみる。

米中貿易摩擦の激化で為替や株の相場が不安定化している。データ分析に優れたAIでも、トランプ米大統領の一言で揺れる「アナログ相場」を読むのは難しいようだ。今後もAIが力を発揮しにくい相場展開がしばらく続きそうだ。

現在は世界のあらゆる事象がデータ化されており「AIを投信に活用する動きは今後も広がっていく」(ニッセイアセットマネジメントの吉野貴晶投資工学開発センター長)。AIに与える情報の整備や選定を担う人間の役割が一層、重要さを増しそうだ。

投信の運用にAIを活用する動きが本格化してからまだ数年しかたっていない。「情報収集の面で改良が進めば、AI投信は将来的に一定の存在感を示せる」(日興リサーチセンターの藤原崇幸主任研究員)との見方が多い。

(川上純平)

[日本経済新聞朝刊2019年8月3日付]