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スイス・北欧…日本酒未開の地 大阪の父子3人が挑戦

世界で急増!日本酒LOVE(12)

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スイスを中心に欧州で日本酒の輸出・販売に精力的に取り組む経営者がいる。小林順蔵商店(本社・大阪市)の代表取締役・小林佑太朗さんだ。同じく代表取締役の父、小林義明さんと、弟の小林研二朗さんと3人でタッグを組んで事業を営んでいる。「父は総監督、私はトータル実務と欧州担当、弟はアジア担当です」と佑太朗さんは話す。

佑太朗さんは三代目。祖父の小林順蔵さんが1890年に創業し、貿易商社として経営してきた。祖父の代はオーストラリアなどから羊毛を買い付けていたが、時代とともに品目は変化。日本酒に着手したのは父の代からで、約10年弱の貿易実績がある。現在は西日本の蔵元を中心に20~30蔵の日本酒を取り扱う。

日本酒を事業の柱にしたきっかけを佑太朗さんは「スイスで信頼できるビジネスパートナーと出会ったから。マークさんの『スイスで日本酒を普及させたい!』という熱意に動かされたのです」と語る。

スイス人のマーク・ニデッガー氏は日本に留学経験もあり、日本酒はもちろん日本食全般に精通していた。そんなマークさんに出会い、最初は手伝い程度からスタートしたが、次第にマークさんの情熱や、蔵元の歴史あるストーリーに感銘を受けて、どんどん親子3人で日本酒の世界にはまっていく。

日本酒を海外で普及させる場合、まず現地の和食店に置いてもらうケースが多い。現地在住の日本人客も多く、和食とのペアリングとして日本酒を提案しやすいからだ。しかし、マーク氏は最初から「ローカル客に日本酒を浸透させる」という考えを貫いていた。

「自分たちは後発なので、大手商社などとは違うスタイル、マークさんのようなスタイルで、現地の食文化にゼロから日本酒の文化を根付かせたいのです」(佑太朗さん)

イギリスやフランスなどでなく、スイスや北欧、スペインなど、「日本酒未開の地」に輸出し、和食以外のレストランなどで現地の人々にダイレクトに訴求できる店に卸している。当然、日本酒を知らない客ばかりなので、提案するのはひと苦労だ。蔵元を海外までアテンドして日本酒の試飲会を現地で開催したり、現地のディストリビューター(日本酒を卸販売している酒事業者)や小売業者、レストランなどと一緒にプロモーション活動にも積極的に取り組んでいる。

佑太朗さんはイギリスに留学経験もあり、欧州文化になじみがある。「欧州には成熟したワイン文化があるので、日本酒も伸びしろがある。非常に面白いマーケット」と意気込む。日本酒の産地や蔵の特徴など、知識が増えれば増えるほど、自分なりに酒のこだわりも出てきてどんどんハマるのが日本酒。それはワイン文化にとても似ている。

佑太朗さんは年に3回はスイスを訪問する。「スイスはEUに加盟していないので、モノを売買するのに手間がかかります。小さなスイスのマーケットなので、入って来る人は少ないのです」と佑太朗さん。閉ざされたマーケットだからこそ、じっくり時間をかけて日本酒の文化を醸成できるという面もある。

当初、スイスでは純米大吟醸や大吟醸が好まれると思っていた。白ワインのような華やかな香りがあり、軽快で飲みやすいからだ。だが意外と、純米酒や生酛(もと)造りの酒が好評だと知る。佑太朗さんは「スッキリした味よりも、複雑味のある重い味が好まれます。スイスの特産品といえばチーズ。さらにクリーム系の料理も多いので、それに合わせるのにどっしりした、うま口系の味が好まれるのです」と分析する。

例えば、居酒屋「稲田屋」を都内などに9店舗展開している、鳥取県米子市の老舗酒蔵・稲田本店の「いなたひめ良燗純米」。燗(かん)でも冷やしてもおいしい酒として知られるが、複雑味のある味なのでスイスで非常に人気なのだという。

一方、北欧は魚をよく食べる土地柄なので、それに合うようなきれいな味わいの大吟醸や淡麗辛口の酒が人気だという。スペインは温暖で、ラテン的なので、スパークリングやフルティーで飲みやすいものなど、屋外でワイワイ楽しめるような日本酒も好まれている。

「ノルウェーでは、にごりの純米吟醸が欲しいと言われたことがあって衝撃を受けました」(佑太朗さん)。感度の高い人は自分で勉強して、マニアックな日本酒を指定買いしてくるのだ。

日本酒の海外への輸出量は年々増加しているが、「輸出先を見ると、75%以上は米国・韓国・中国など上位5カ国が占めている状態。欧州はごくわずかで、世界全体でみるとまだまだ日本酒が広く流通しているとは言えません」と佑太朗さんは見ている。

欧州に輸出拡大させるには、商習慣・文化・物流などのトランスレーション(翻訳)の作業が大事だと彼は考える。例えば現地では、「この日本酒はどんな料理に合うの?」と質問されるが、日本人は「どんな料理にも合います」と答えがちだという。具体的に「特に白身魚に合います。肉のステーキに合います」と答えないと、買ってもらえないのだ。会話の背景にある、文化のトランスレーションができていないため、こういうことが起きてしまうという。

言葉が通じるから必ずしも日本酒が売れるわけでない。各国の商習慣や文化、物流などの違いを理解した上で、うまくトランスレーションしないと日本酒は売れない。それがなかなか難しい。

佑太朗さんは今夏、海外で日本酒ビジネスを手がけたい国内外の人向けのBtoBサイトを立ち上げる予定だ。各国の関税や、蔵元がどのように現地ディストリビューターに日本酒の特徴を伝えたらいいかなど、プロ向けの情報をまとめた「IKKI」と題したサイトを日本語と英語で開設する。

これまで、日本酒の輸入を検討している人から、こんな不満を言われることが多かった。「日本酒の事業に興味があるけれど、勉強する場所がない。英語で書かれた本は少なく、日本語の本などは読めない。さらに複数のウェブサイトや機関に情報が分散していて、色々なところに問い合わせるのが面倒だ」。そこで情報を一元管理できるサイトを立ち上げることにした。

アジアでは、弟の研二朗さんも奮闘。現地からの引き合いも入るようになってきた。「こちらも現地和食店ではなく、タイ料理やマレーシア料理店に日本酒を提案していくやり方なので、5~10年後のために種まきしている感じです」と、兄の佑太朗さんは弟を励ます。

世界中のレストランで、「お飲み物は?」と聞かれたら、客がビールやワインと同じように日本酒を候補に上げてくれる日を夢見るという小林親子。3人で力を合わせて、まずは欧州をメーンに日本酒を広める取り組みを続ける。

(国際きき酒師&サケ・エキスパート 滝口智子)

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