日本株、停滞脱却へ 目先波乱も政策期待(武者陵司)武者リサーチ代表

写真はイメージ=123RF
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「日本株は目先波乱含みだが、世界景気の好転期待、政府・日銀への政策期待を背景に停滞から脱却する可能性がある」

世界の株式相場が先週後半に急落した。米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長が10年半ぶりの利下げを決めたあとの記者会見で長期の利下げ局面入りを否定したのに続き、トランプ米大統領が対中関税第4弾を9月1日に発動すると表明。米中摩擦激化への懸念から大幅安となった。しかし筆者はこれは一時的な調整にすぎないとみている。

米中貿易交渉は現時点で落としどころがみえなくなっているが、制裁関税の影響は米経済に対して限定的である一方、中国経済へのダメージは大きい。中国はいずれ譲歩せざるを得ないだろう(詳細は6月3日付コラム「米中摩擦は米優位 景気好転を読む市場」)。米景気に懸念が高まるようならFRBが追加利下げに踏み切る可能性も大きい。主要国の株式相場は目先は乱高下する場面があり得るが、景気好転と政策期待を背景に堅調さを取り戻すだろう。

出遅れ目立つ日本株

こうした中で日本株をどうみるべきだろうか。まず足元で日本株の停滞ぶりが顕著である。2018年末から19年7月末までの株価上昇率をみると日経平均株価は7%であるのに対し、米S&P500種株価指数は18%、独DAX指数は15%、上海総合指数は17%だ。

日本株が苦戦している理由を考えてみよう。仮説の第一は、世界景気の悪化が進行するという見方である。日本株は景気悪化の懸念をいち早く織り込んでおり、いずれ米国株、中国株なども下落に転じるという見立てだ。仮説の第二は、世界経済の拡大は続き投資マネーがリスク資産に向かう流れは大きく変わらないが、日本株は日本固有の理由で出遅れているというものだ。

まず第一の仮説は当たらないだろう。国内総生産(GDP)でそれぞれ世界1、2位の米国と中国は貿易戦争のさなかにあるとはいえ、決定的な全面対決は回避されると筆者はみている。貿易以外で悪材料が出たとしても両国は金融緩和・財政出動という2つの政策手段の余地があり、米中経済は底堅いと想定できる。

米経済は史上最長の景気拡大が09年から10年にわたって続いているが、その中でも好不調の波があり、貿易や投資の動向に現れている。最近では15年春ピーク、16年春ボトム、18年春ピーク、19年春ボトムとなっている。18年半ばからの調整局面はスマホや自動車の買い替え需要でピーク感が強まっているときに米中貿易戦争が勃発し、先行き不透明感から多くの投資案件が棚上げされたことによって起こった。しかし足元では買い替えサイクルが一巡するとともに、米中貿易戦争は中国の譲歩という形がいずれ見えてくるだろう。米景気は今後上向く可能性が強く、それとともに世界景気の懸念も薄れていきそうだ。

とすれば日本株は第二の仮説、つまり日本株固有の理由が重荷になっている可能性がありそうだ。具体的には(1)日本企業の業績見通しに世界景気の好転サイクルが反映されていない(2)政府・日銀への政策期待が外国人投資家を中心に低い(3)ハイテクや人工知能(AI)分野で日本企業は負け組とみられている――の3つが大きいが、これらは今後修正されていくと筆者は予想している。

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