日経トレンディ

上位には「王道」のテクニックが並んだ。最も実践率が高かった1位の「同じ時刻に毎日起きる」と2位の「起きたら光を浴びる」に共通する目的は、体内時計のリズムを保つこと。人間は、朝起きて日光を浴びることで体内時計をリセットし、その14~16時間後にメラトニンが分泌され始めて、次第に眠くなるようにできている。週末に昼まで寝ていると、夜なかなか眠れなくなるのはこのためだ。疲れて夕方に「寝落ち」したり、帰りの電車の中で寝たりしてしまうのも、体内時計を狂わせるので好ましくない。日中の眠気を取るには仮眠が効果的だが、夜の睡眠への影響を抑えるため、17時までの時間帯で20分以内の仮眠にとどめるべきだ。

3位の「寝る直前はスマホ禁止」と、4位の「照明の色を夜間に変更」は、就寝に向け睡眠環境を整えるテクニック。夜間は昼間に比べて脳が光に敏感に反応するので、スマホ画面や明るい照明を見ていると交感神経が刺激されて覚醒してしまう。寝る直前は照明の照度を落とし、スマホやパソコンを使わないのが理想だ。そして5位の「就寝前に入浴する」は、体の「深部体温」を下がりやすくして、より深く眠るための技術になる。

もちろん、これらの睡眠習慣を実践しても、肝心の寝室が熟睡に適していなければ意味がない。睡眠評価研究機構の白川氏も「日本は、季節による温度や湿度の変化が大きい。寝室に一番高機能なエアコンを設置し、季節に応じて寝具や枕を替えるくらいはすべき」と睡眠環境の重要性を説く。

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■睡眠評価研究機構代表・白川修一郎氏が勧める「睡眠環境」

【空調】
気温と湿度は睡眠に大きな影響を与える。特に夜の気温が28℃を超えるときは、エアコンをつけっぱなしにするべき。ただ、起床時にだるさを感じるときは冷やし過ぎ。設定を細かく調節できる機種を選ぶか、タイマー設定などで3~4時間後にオフにする[注1]
◎望ましい温度・湿度
「夏」25~28℃、湿度70%以下
「冬」16~20℃、湿度50%以上

【寝具】
寝具は、敷き具が特に重要。「夏場は麻のように通気性の良い素材、冬場は断熱性のある素材のベッドパッドなどがお薦め」(白川氏)。また硬さは、筋肉量が多い人ほど硬めのマットレスなどが適していることが多い。掛け具は、夏でも冬でも軽い素材がよい。万人向けの敷き具は無く、横になってみて快適な素材を選ぶしかない。枕は、高過ぎると呼吸を妨げるので、低めの枕を購入してタオルなどで高さ調節する。

[注1]人は1晩で「ノンレム睡眠」と「レム睡眠」を何度か繰り返す。体や脳が最も休息できるのは、最初の3時間に起こるノンレム睡眠時。この間に目覚めないよう、エアコンをオフにするのは入眠3~4時間以降にする。

(カメラマン 高山透)

[日経トレンディ2019年7月号記事を再構成]

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