日本は、世界でトップクラスの「眠れていない国」だ。厚生労働省の「平成29年(2016年)国民健康・栄養調査」では、20.2%の人が「睡眠で休養が十分に取れていない」と回答。この比率は40代に限れば30.9%に達し、2009年の調査以降、年々増加傾向にある。それもそのはずで、20歳以上の39.2%は睡眠時間が6時間未満と短い。経済協力開発機構(OECD)が調査した33カ国のうち、日本の平均睡眠時間は最低だ。
ナポレオンやエジソンの伝説のように、「3~5時間眠れば十分」という人もまれにいるが、睡眠評価研究機構代表の白川修一郎氏によれば、「5時間未満の睡眠で足りる『ショートスリーパー』は人口の約0.5%で、すべて遺伝によるもの」。ショートスリーパーの人は子供の頃から短時間睡眠なのが普通で、後から訓練によって睡眠時間を短くすることはできない。大多数の人は、7~9時間の睡眠時間が適切だ。
睡眠には、「脳や交感神経を休ませる」「成長ホルモンで代謝を促進する」「記憶の定着と整理を進める」といった、多くの重要な役割がある。従って、睡眠不足が何日も続くと、次第に「睡眠負債」が蓄積され、心身のパフォーマンスが落ちてしまう。負債を減らすには、まず自分の睡眠を見直し、改善のための知識を身に付けることが必要だ。
最初に次のチェックリストを見ながら、この1週間を振り返ってほしい。たとえ1項目であっても、同じ問題が週のうち4~5日間起きているなら要注意。寝付きが良すぎるのも睡眠不足の表れなので問題だ。睡眠負債がお金や筋肉と違うのは、「貯金」や「繰り上げ返済」ができないところ。「今週はあまり眠れなかったので、週末は昼まで寝坊する」といった行動は、無意味なうえに生体リズムを崩すので、絶対にやってはならない。たまった睡眠負債は「いつもより30分ずつ早く寝る」といった方法で、少しずつ返済するしかない。
●寝付き
□寝床に入って1分以内に眠ることがある
□寝付くまでに15分以上かかる
●途中覚醒
□途中夜中に何度か起きることがある
□途中起きて寝られなくなることがある
□目覚まし時刻の2時間以上前に起きてしまう
●疲労
□たくさん寝ても疲れが取れない
□起きたい時間に起きるのがつらい
●眠気
□起床から4時間以内に眠気を感じる
□昼間に強い眠気を感じる
□帰宅中、電車の中で寝てしまう
※ニューロスペースが企業の睡眠改善プログラムで使用するリストを基に作成。1週間を振り返り、同じ悩みが数日続いていたら1項目でも要注意だ
仕事ができる人は睡眠上手
もちろん、質の高い睡眠を十分な時間取るのがベストだが、睡眠時間の確保は一朝一夕にはうまくいかない。まず睡眠の質を改善し、それから睡眠時間の確保を長期的に目指すのが現実的だ。では睡眠の質を上げるにはどうすればよいか。ネット上には、睡眠スケジュールの立て方や入浴法、寝具の選び方、お薦めのアロマやサプリなど、様々な睡眠テクニックがあふれている。一度にすべてを試すのは困難だ。
そこで今回は、効果的な睡眠テクニックを探るため、企業の社員に「睡眠改善プログラム」を提供するニューロスペースの協力を得た。同社は、スリープテックを用いて、個人の特性に合わせた睡眠指導を行っている。CEOの小林孝徳氏は、「1万人以上のオフィスワーカーの睡眠状況を調べてみたところ、日中の仕事の出来が良い『ハイパフォーマー』の睡眠習慣に共通点があった」と語る。その上位が、次に紹介する5つの睡眠改善習慣だ。