照れずに愛を伝え、一番好きなことを見つけてあげる石川芳美メゾン・ランドゥメンヌ・ジャポン社長(下)

仕事を両立しやすいフランスだからこそ、子どもにしっかり向き合おうと決めました。一緒にいる時間は限られますが、濃さは時間に比例しません。私は仕事に行くとき、後ろめたい気持ちは一切持ちません。娘も「行かないで」と言ったり泣いたりしたことは一度もありません。この春休みには2週間日本に来ました。行きはパパと一緒だったけれど、私も仕事が残っていたので帰りは娘一人でした。きりっと背筋を伸ばして帰って行く姿はかっこよかった。大切なのは腹をくくること。親が腹をくくれないと、子どもも腹をくくれません。

娘が初めて日本に来た際、大分の親戚の家で兄弟4人がそろった。5人での初めての旅行(石川さん提供)

小さな幸せを表現し、伝える

一緒にいるときは、自分にしかできないことに集中して、他のことは人に任せます。仕事も子育ても家事も全てやろうとするのは大変。中途半端になるくらいなら、他人に任せた方が時間の余裕が生まれて、子どもに優しく接することができます。

自分にしかできないこと。一つは愛を伝えることです。

日本では病気になって離婚しました。当時、カウンセリングで「小さな幸せ」を実感する訓練を積みました。同じように、子どもには小さな幸せを表現したり、伝えたりしています。そんな日々が積み重なることで、「かけがえのないお母さん」と思ってもらえます。そして、大人になると、「尊敬」に変わります。日本にいる3人の息子を育て、実感しました。

だから私は娘に毎日キスをし、抱きしめて、「大好きよ、お母さんのところに生まれてきてくれてありがとう」と言います。子どもは、親の絶対的な愛に守られてさえいれば、自由に生きていけます。日本人は苦手かもしれませんね。私は子どもたちと離れざるを得なくなりました。それでも、愛を伝えなければならなかった。恥ずかしがってなどいられませんでした。

毎日娘にキスをし、抱きしめて、「大好きよ、お母さんのところに生まれてきてくれてありがとう」と話す

もう一つは子どもの「一番好き」なことを見つけてあげることです。大人になったとき「一番好き」なことがあれば、どんな状況でも未来の扉は開きます。私にとってはパンでした。今もお世話になっているシッターさんがアーティストだからでしょうか。娘はものをつくるのが大好きです。バレエ、ピアノ、そしてロッククライミングなども。興味を持つもの、「好き」というものはなんでもチャレンジさせています。

日本語だけは強制しました。小学3年生ごろ、漢字が出てきたころにやめたいと言い出しました。日本語は私の母国語ですから、むりやりにでも覚えさせました。続けると漢字の面白さに目覚め、漢字検定を受けるまでに。「一番好き」を見つける方法はいくつかあるのかもしれませんね。とりあえずいろんな世界をみて、その中から自分の一番を見つけてほしいと思っています。

これまでずっと急いで生きていました。でも、それだけだと失敗します。昔なら若気の至りで済んだかもしれませんが、50歳を過ぎた今は、「余裕から生まれる力強さ」を大切にしたい。週末の仕事を控えて家族で過ごしたり、走ったり。最近、絵も習い始めました。今の座右の銘は「緩急自在」。絵画はイタリア人の画家に師事し、60歳になれば個展をやりたいと思っています。また忙しくなりそうですが(笑)。

(聞き手は女性面編集長 中村奈都子)

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