ライフコラム

井上芳雄 エンタメ通信

鳳蘭さんの輝き お客さまの笑顔が大好き(井上芳雄) 第49回

日経エンタテインメント!

2019/8/3

井上芳雄です。6月23日に『レジェンド・オブ・ミュージカル in クリエ』の第4回を催しました。ミュージカル界のレジェンドをお迎えして、日本のミュージカル創生期の話を、僕がホストとしてうかがう企画です。今回は鳳蘭さんに来ていただきました。鳳さんは、パフォーマンスの素晴らしさも含めて、エネルギーが満ちあふれてとまらないという様子で、バイタリティーに圧倒されました。

6月23日にシアタークリエで開催された『レジェンド・オブ・ミュージカル in クリエ Vol.4』。左から鳳蘭、井上芳雄(写真提供/東宝演劇部)

鳳さんは1964年に宝塚歌劇団に入団。70年に星組トップスター就任。76年の『ベルサイユのばら』でフェルゼン役、77年の『風と共に去りぬ』でレット・バトラー役といった伝説的な作品に出演されました。そして79年に宝塚を退団。80年に『ファニー・ガール』で東宝に初出演以降、今年の『ラブ・ネバー・ダイ』に至るまで約40年間、多くのミュージカルで活躍されています。

その長きにわたって第一線で活躍されている秘けつや苦労話をうかがおうと、作品ごとにいろんな質問を考えていたのですが、鳳さんの受け答えはいつも同じ。「あまり覚えていないの」と「苦労はなかったわ。持って生まれた才能だから」。最初は、お客さまの受けを考えてのフレーズかと思いましたが、トークショーの最初から最後まで、90分間それを貫かれました。そんなゲストの方は初めてなので驚いたし、それをできるのもすごい話術です。

何を聞いても答えが一貫しているので、僕としてはリアクションのバリエーションを増やすしかなくて、そこは試されているみたいな気分でした。最初こそ「僕もそういう芸風なんです」とか「謙遜しないのって楽ですよね」と言っていたのですが、どんどんそれだけでは対応しきれなくなり、「聞かなきゃよかった」とかいろいろ言って、最後には椅子から転がり落ちるという初めてのリアクションまでやりました。

でも、鳳さんのトークはお客さまに大受けで、舞台にいると客席から笑いの波が来るのを肌で感じました。鳳さんは、ご自身のことを「異常なサービス精神」があって、「目の前にいるお客さまが、にこにこと笑っているのが大好きなの。悲しそうな顔をしたら、どうやってこの人を明るく、幸せにしようと思ってしまう」とおっしゃっていましたが、まさに鳳さんだから生まれる場の空気でした。

話を聞きながら、おこがましいですが、自分と共通点があるとも感じていました。僕も、昔のことはあまり覚えていないし、謙遜しない芸風でもあるので、方向性は似ています。ただ僕の場合は、意識してそう振る舞っているところもあるのですが、鳳さんは本当に昔の作品のエピソードが出てこなかったりして、根っからおおらかな人柄がうかがえます。

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