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一人パリで修行 子どもが自慢できる母になるために

石川芳美メゾン・ランドゥメンヌ・ジャポン社長(上)

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NIKKEI STYLE

子を育てるということは、次の時代をつくること。どんな価値観をもった人間になるかは、子育てが左右する。でも、一人ひとり個性も成長スピードも違う。もちろん、育てる私たちも。では聞いてみよう。世界をよく知り、がんばって働き、自分らしく伸びやかに生きる女性たちに。子育てで本当に大切なことが見えてくるはずだ。

1回目はパリや東京でベーカリー「メゾン・ランドゥメンヌ」18店を経営する石川芳美さん(52)に聞いた。約20年前に離婚し、3人の子どもと離れて一人フランスへ。フランス人男性と再婚し、2007年にパリで、15年に東京で店を出す。どの店も天然自然酵母を使って長時間発酵させる伝統的な製法を引き継ぎ、仕込みから焼きまでを手掛ける。今は夫と娘と共にパリで暮らしながら、日本とフランスを頻繁に行き来する。一時は心を閉ざした子どもと何でも話せる関係を築きあげ、「自慢の母」になった背景には、石川さんの「絶対にあきらめない覚悟と努力」があった。

子どもを信じて、やりたいことを全力で応援する

この春は1カ月、日本に滞在しました。羽田空港に到着して、最初に向かったのは三男がいる福岡。大学を卒業し、ギタリストとして活動を始めたのです。会社員の次男も住んでいる京都から駆けつけ、一緒にライブにも行きました。昨年の秋以降、三男とは進路については何度も話し合ってきました。最初は就職するように言ったけれど、本気だと分かってからは応援することにしました。やれば答えは出る。気持ちを押さえつけても封じ込めても、後から必ず出てくるものです。だから子どもを信じて、やりたいことを全力で応援した方がいい。私自身、やりたいことを押さえつけて心を病み、子どもと離ればなれになりました。同じ思いはさせたくないのです。

私は東京で生まれ、広島で育ちました。子どもの頃から好きなことには熱中する性格で、3歳から始めたオルガンはプロを目指して猛練習しました。20歳で結婚し、22歳で長男を出産。夫の家が漬物店だったため、発酵について勉強しようと思い立ち、偶然パン教室のポスターを見つけたのです。あっという間に夢中になり、3年間教室に通いました。修了すると、建てたばかりの自宅でパン教室を始めました。この時すでに子どもは3人。三男は生まれたばかりでした。そんな状況だったので、教室も子連れOKにしたら大盛況です。すぐに2校目を開き、パン店も出しました。

30代の女性に向けて、人生を美しく生きるためのサークル「30's Party(サーティーズパーティー)」も企画しました。経営者になりたいと強く思うようになったのはこの頃です。パソコンがない時代でしたから、電話講座です。子どもを寝かしつけて夜中の1時から1年間、電話で先生から事業計画の立て方を学びました。先生の顔を知らないまま、1対1でみっちり勉強しました。

事業はいい感じで成長し、どんどん仕事にのめり込んでいったけれど、家庭がうまくいかなくなりました。夫は漬物店を継ぐため、自分を支えてくれる良妻賢母を望んでいたようです。「もう少し家にいて子どもを育ててくれないか」と言われ、いままで回っていたはずの歯車が壊れたのです。事業家として進みたいのに、お母さん、奥さん、おかみさんをやらなきゃいけない重圧。均衡が取れなくなって、心を病んでしまいました。この頃の記憶はほとんどありません。異変に気付いて病院に連れて行ってくれたのは、母でした。

結局、離婚して実家に戻ることにした。事業もすべて手放した。生活のためにパン店で働き始めると、オーナーからフランスで学ぶよう勧められる。ちょうど日本にも、ハード系のパンが入り始めた時期だった。広島で子どもと同じ時間を過ごすことがつらかったこともあり一人、フランスへ旅立つ。

うつの症状があり、子どもは引き取れませんでした。全てを失い、何もない自分。広島で子どもと同じ時間を刻むのが、すごくつらかった。「いま起きたかな」とか、「学校行ったかな」とか。復縁も考えたけれど、うまくいきませんでした。このままではいけない。いつか子どもが大きくなったとき「この人が僕の母です」と胸を張って紹介してもらえる自分になる、と心に誓いました、自分にできることはパンを焼くことです。ハード系のパンを学ぶため単身、フランスへ渡りました。35歳の時です。

知人の紹介などを経てパリ16区の店で働き始めました。でも、心はいつも息子たちのいる広島です。子どもに会うために飛行機代を稼ぎ、お土産を買う。ただそれだけが目標でした。周りからは「日本に帰って子どもたちのそばにいてやるべきだ」と言われたこともあります。でも、パリでなら今の状況から抜け出せる、子どもたちが自慢できる母になれると感じていました。

大人になって口にする言葉が親の成績表

3カ月に一度は実家に戻り、1週間ほど子どもたちと一緒に過ごします。ご飯をつくって一緒に食べ、部活動の世話人とか習い事の送迎もしました。できること、思いつくことは全部やろうと決めていました。会える時間が限られているから、周りの目なんか気にしていられません。子どもだけを見ていました。子どもたちには、「何かあったらお母さんが必ず守るから」と伝え続けました。離婚して、日々の母親業はあきらめざるを得ませんでした。私にしかできないことといえば、母としての愛を伝えることだけでした。

それでも、子どもたちが素直に受け入れてくれたわけではありません。特に長男です。会うことこそ拒否しませんでしたが、長い間、自分の目を見て話してくれませんでした。振り返れば、離婚したとき長男は中学生。私がいなくなって一番大変だったはずです。長男が大学生になって東京に住み始めてからも、日本に来るたび下宿先を訪ね、泊まって洗濯したり、ご飯を作ったりしました。あるとき「じゃあこれでフランスに帰るね」って扉を閉めようとした瞬間、私の目を見て「おかあさん、ありがとう」と言ってくれました。今までやってきたことが間違っていなかった。玄関先で涙が止まりませんでした。

子育ては短いけれど、人生は長く続きます。小さい頃は自分の気持ちをうまく言葉にできなくても、成長すればはっきり表現します。もちろん、自分の母親についても。子どもたちが大人になった時、親をどう見るのか。そこで出てくる言葉こそ、親の成績表なんだと思います。だから、自分に自信が持てる人になっておくことが重要だと考えています。

跡継ぎとして経営者の道を歩き始めた長男は30歳になり、最近は仕事を手伝ってほしいと冗談交じりに言われるようになりました。同じ経営者としてアドバイスを求められることもあります。京都での催事に顔を出すと、会場にいた次男は自分の取引先に「僕の母です」と紹介してくれました。そして三男。叱ることもありますが、意外に難しい。距離があるとできない。だから厳しく叱れる関係になったことをうれしく感じています。

パリで再婚し、生まれた娘は今12歳です。日本に来てお兄ちゃんに会うことをいつも楽しみにしています。パリでの子育ては、私が経験した日本のそれとは全く違いました。

(聞き手は女性面編集長 中村奈都子)

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