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金属のウロコ持つ奇妙な深海生物 絶滅危惧種に指定

日経ナショナル ジオグラフィック社

2019/8/12

ナショナルジオグラフィック日本版

巻き貝の仲間スケーリーフットを下から見たところ(提供:JAMSTEC)

体が金属のウロコで覆われたような、奇妙な深海生物スケーリーフット(学名:Chrysomallon squamiferum、和名:ウロコフネタマガイ)が2019年7月18日、国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストにおいて、絶滅危惧種(Endangered)に指定された。

スケーリーフットは、深海の熱水噴出孔だけに密集して生息する巻き貝の仲間。熱水噴出孔でしか確認できていない深海生物がレッドリストに記載されるのは今回が初めてだ。

■70%が「熱水固有種」

熱水噴出孔。「チムニー」と呼ばれる煙突状の構造物などから熱水が噴き出す(提供:JAMSTEC)

「熱水噴出孔にすむ動物は現在、数百種が知られていますが、そのうち実に70%以上が熱水に適応しすぎて、そこ以外では生きられないスケーリーフットなどの『熱水固有種』です。しかも、それぞれの熱水サイトの面積は小さいため、環境変化の影響を受けてサイト自体が破壊されやすいのです」と、海洋研究開発機構(JAMSTEC)の研究員チョン・チェン(Chong Chen)氏は言う。氏は、7月22日付けで学術誌「Nature Ecology & Evolution」に、スケーリーフットのレッドリスト記載と深海生物の多様性保護についての記事を掲載した。

現在、スケーリーフットの生息が確認されているのは、インド洋の水深2400~2900メートルにある3カ所の熱水噴出域のみ。それぞれの生息域は小さく、互いに離れているために個体が行き来することもほとんどない。

スケーリーフットが生息する3つの熱水サイト(提供:JAMSTEC)

一方で、熱水サイトは海底資源の開発対象として注目されており、3カ所のスケーリーフット生息域のうち2カ所ではすでに中国とドイツが海底資源開発に向けた調査を進めている。IUCNは、深海底の掘削がスケーリーフットの生息域を損ない、広範囲に継続的な影響を及ぼすおそれがあるとして、絶滅危惧種への指定を決めた。

これまで深海の生態系については情報が少なかったため、絶滅が危ぶまれる状況かどうかの評価が難しかった。今回の指定は、これから深海生物の評価を進めるうえでの水準を示した重要なケーススタディーになると、研究者らは考える。

チェン氏ら研究者はさらに14種の深海生物についてもレッドリスト記載を提案しており、現在IUCNが評価中だという。

「熱水サイトは地球生命誕生の最も有力な候補地でもあります。採掘をするなら、環境に与える影響を科学的に評価した上で、海洋保護区を設定するなど、できる限り生態系に与える影響を少なくする努力をするべきと思っています」

(文 ナショナル ジオグラフィック日本版Web編集部)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2019年7月24日付]

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