巨大ブラックホール、一般相対論を証明 天の川銀河で

日経ナショナル ジオグラフィック社

2019/8/10

重力が光を引き伸ばす

一般相対性理論を検証するため、研究チームはS0-2の位置の測定結果と、その運動の観測結果とを合わせることで、「重力赤方偏移」と呼ばれる効果を測定した。

いて座A*付近の複数の恒星の軌道を追跡した図。S0-2の軌道を黄色で強調してある(IMAGE BY KECK, UCLA GALACTIC CENTER GROUP)

簡単に言うと、S0-2がいて座A*に最接近すると、ブラックホールの強力な重力によってS0-2からの光のエネルギーが失われ、波長が長くなる。つまり、光のスペクトルが赤い方にずれるのだ。

「重力赤方偏移はスペクトルから読み解くことができます」とゲズ氏は話す。S0-2からの光は、秒速200km程度減速されたのに相当するエネルギーが失われていた。これは、いて座A*と同じ大きさの重力を及ぼす天体について、アインシュタインの方程式が予想している数値とぴったり一致する。おまけに、この研究により、いて座A*の質量と距離を、より正確に知ることができた。

科学者たちはこれまでも、より弱い重力場をもつ太陽系などのまわりでも、同様の方法で一般相対性理論を確認している。GPS衛星は地球の重力による相対論的効果をたえず補正しなければならず、それを行わないと、あらゆる種類の地図アプリを使ったナビゲーションが不可能になる。

さらに、ドイツのマックス・プランク宇宙物理学研究所のGRAVITYチームは、数十年にわたって銀河系の中心部を調べていて、2018年、S0-2の光にゲズ氏のチームが今回発表したのと同じ重力赤方偏移を検出し、学術誌『Astronomy & Astrophysics』に発表している。

2つの測定で同じ結果が出たことは、重力のふるまいがニュートンのモデルではなくアインシュタインの理論と一致していることを示唆しているが、詳細に見ると食い違いもある。ゲズ氏は、この不一致は観測機器や基準系による系統誤差によって説明できるのではないかと考えているが、両チームが銀河中心の観測を続けていく上で、こうした誤差をなくしていくことがますます重要になるだろうと話す。

GRAVITYの主任研究者であるフランク・アイゼンハウアー氏は、独立した別々の測定により重力赤方偏移が確認されたのはすばらしいことだと言う。銀河系の中心の超大質量ブラックホールは、彼にとって、ブラックホールの物理学と重力理論のカギを握る天体であり続けている。

「銀河の中心に関する研究の未来は明るいと思います」と彼は言う。

(文 Nadia Drake、訳 三枝小夜子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2019年7月29日付]

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