相続税の申告漏れ 税務署はどこを見ているのか相続税の基礎(4)

2019/8/4

ある日の夜。幸子と恵が夏休みの旅行先の話題で盛り上がっていると、雑誌を読んでいた良男が顔を上げました。「税務署の職員は夏休みがほとんどないと書いてあるぞ」と雑誌を指さします。「えっ、どうして?」。恵が思わず身を乗り出しました。

筧(かけい)家の家族構成
筧幸子(48)良男の妻。ファイナンシャルプランナーの資格を持つ。
筧良男(52)機械メーカー勤務。家計や資産運用は基本的に妻任せ。
筧恵(25)娘。旅行会社に勤める社会人3年目。
筧満(15)息子。投資を勉強しながらジュニアNISAで運用中。

幸子 「夏休みはない」は少し大げさだけど、税務署が例年7月から12月にかけて忙しくなるのは確かね。相続税、贈与税、所得税など個人の税金について集中的に税務調査をする時期だからよ。

 税務署が忙しいのはてっきり確定申告のシーズンだと思ってたわ。

幸子 もちろんその時期も忙しいのよ。年前半は確定申告やその処理に追われるので、税務調査は年の後半に集中する傾向があるみたい。国税庁は「調査は年間を通じて行っている」といってるけどね。

良男 税務調査というと、ドラマなんかで税務職員が納税者の自宅を突然訪れて上がり込む、あれのこと?

幸子 それは脱税の疑いがある人に実施する強制調査で「査察」のことね。裁判所から交付される令状がないとできないのよ。それとは別に、納税者に事前に通知して合意を得てから行う「任意調査」があって、税務調査とは通常はこちらを指すの。税務申告の中には査察の対象になるほど悪質な脱税ではないものの、「加算税」という行政ペナルティーを科すべき案件もあるでしょ。法令を誤解して税額計算を間違って申告しているケースもかなりあるので、税務調査はそれを正すために申告内容をチェックするのよ。

 税務署の調査ってなんだか厳しそうね。

幸子 調査官が納税者の自宅などを訪れて、質問したり帳簿などを検査したりする実地調査が中心みたい。申告漏れなどが見つかった場合は、納税者が自主的に誤りを認めて正しい税額を申告する「修正申告」を求められるのよ。