2019/8/6

一方運用担当者が平均を上回ることを目指すアクティブ型でよく見られる年1.7%の信託報酬なら、運用成績が同じ場合、資産は560万円にとどまった。投信選びに特段の自信がない場合は低コストのインデックス投信を選ぶのが無難だ。金融機関ごとの投信の品ぞろえや口座管理料は確定拠出年金教育協会のサイト「iDeCoナビ」などで一覧できる。

法則4、世界の株式に長期分散投資

イデコは投信だけでなく預貯金も可能。投資が怖く節税効果だけを得たければ預貯金を選ぶのも選択肢で、イデコ残高の6割が預貯金など元本確保型だ。ただし世界全体の株式に投資できる投信を選んで長期保有すれば過去は大きく増やせてきた。運用時に非課税で増やせるという利点を生かすためにも、せっかくなら長期で増える株式投信を選びたい。

法則5、途中で使うお金はNISAで

イデコは原則60歳になるまで引き出せない。老後の年金づくりの仕組みだからだ。税優遇の大きな制度としては他にも少額投資非課税制度(NISA)がある。イデコのように掛け金が所得控除にはならないが、運用益はまるまる非課税。イデコと違っていつでも引き出せる。教育資金や住宅資金など途中で使うお金はNISAや普通の預金口座の預貯金で対応すべきだ。

法則6、安心老後にはNISAとイデコの併用を

従来あった非課税期間5年の「一般NISA」に加え、年上限40万円で20年非課税で運用できる積み立て方式の「つみたてNISA」が昨年新たにできた。NISAとイデコは併用可能。企業年金のない会社員であれば、イデコで年間27万6000円、つみたてNISAで40万円と合計年67万6000円を投資できる。

これを20年間積み立てれば、累計投資額は1352万円。年率3%で運用できたら、運用成果と税負担減の効果を合わせると金額は約2000万円になる。世界の株式に長期で投資する場合の期待リターンを年5~6%とみる機関投資家は多く、年3%は特に過大ではない。

老後資金に関する金融庁の「消された報告書」が不足額の一例として挙げた金額が、イデコとNISAの併用で用意できる計算になる。

法則7、引き出し時には節税の工夫を

イデコは一時金でも年金でも引き出せる。引き出し時は基本的に課税されるがやはり税優遇がある。一時金で引き出すと退職所得控除(加入20年までは年40万円、それ以降は年70万円の非課税枠が年々積み上がり、30年加入なら1500万円まで非課税になる)、年金なら公的年金等控除(通常60代前半は年70万円まで、後半は年120万円まで非課税)が使える。

ただしこうした税の優遇枠はイデコ単独のものではなく、勤務先の退職金や公的年金と共通だ。退職金や公的年金が多い元会社員や公務員などはこれらの枠が余っておらず、イデコのお金は引き出し方次第ではまるまる課税されかねない。税理士などに相談して有利な引き出し方を考えるべきだ。

例えば公的年金は原則65歳からで、その場合、60代前半の公的年金等控除70万円の枠は余っている。この5年間だけ年70万円ずつ年金で計350万円を非課税で引き出し、残りの金額をその後一時金で受け取るなど、節税の工夫の余地はいろいろある。

(編集委員 田村正之)