「ミネラ~ル・ム・ギ・チャ」のCMで知られている石垣食品が昨年12月、赤坂にワインバー「nomuno2924」(ノムノニクフジ)を出店した。「3000円で100種類のワインが飲み比べできる。しかも時間無制限の飲み放題。食べ物は持ち込み自由」という。外食業界で注目業態のサブスクリプションだが、「麦茶の会社」がワインバーを手がける意図はどのようなものか、石垣裕義社長に聞いた。
――ワインの飲み放題店に参入されました。ワインは長くブームが続いていますが、飲み放題店となると珍しいです。
ビジネスの観点からお話しする前に、実は私は若いころからワインが大好きなんです。会食ではビールで乾杯した後はずっとワインですね。でもそんなに詳しいわけではなく、ソムリエの方に選んでいただいて、そのときの料理に合わせて色々なワインを試すのが好きです。今回のパートナーとなったノムノ(川崎市・蔵石周太社長)さんは、「ワイン100種類時間無制限飲み放題」のスタイルで「nomuno」というワインバーを展開しています。100種類ものワインが飲み放題だなんて、客として自分が真っ先に行きたい店です。
もちろん、ビジネスとしても検討してのことです。飲食業に参入するに当たり、飲食業界の課題は何か、将来飲食業はどうなるのかを考えたところ、やはり人手不足問題が大きいと思いました。その点、「nomuno」という店は、お客様が好きなワインを自分で勝手に注いで飲む形式ですから、ワンオペ(1人で運営する)が可能です。ほかの飲食業態に比べて、損益分岐点が低いのです。お客様も、テーブルサービスはないけれど、好きなだけ好きなワインが飲めるとあって、ほかの飲食業態よりも楽しんでいただけるのではないでしょうか。
もう1つ、飲み放題が日本酒やビールではなく、ワインであることゆえのメリットがあります。「nomuno」には優秀な人が集まるのです。というのも、日本というのは人口比では世界でも最もソムリエ人口が多い国だと言われてるのですが、ソムリエやソムリエの卵の人たちにとっても「nomuno」で得られる情報が多いので、この店で働きたいという人が多いのです。
こんなことからワインの飲み放題店というのは、現在飲食業界が抱える問題を解決する切り札となる業態だと思いまして、参画を決意した次第です。
――好奇心旺盛なお客さんと高感度なスタッフが集まりそうですね。しかもローコストオペレーションであると。
ただ、今回私たちが手がけた「nomuno2924」の場合は既存の「nomuno」とは少し違う業態としています。まず、ワイン以外のドリンクとフードメニューもラインアップしています。ドリンクは当社の商品を使った「焼酎出し麦茶」など。フードメニューは、やはり当社商品の麦茶を使った麦茶飯。それからビーフジャーキーなどです。
そして、フードメニューには店内調理を行うものもあります。店名の「2924」(ニクフジ)は、「肉」と「フジミネラル麦茶」の「フジ」ですが、焼き肉の人気店「肉のヒマラヤ 焚火家(たきびや)」ともコラボレーションしていて、肉料理にも力を入れているのです。
さらに、実は店舗面積が小さいため売り上げを確保するために客単価を上げる必要があり、この6月にワイン飲み放題込みで、しかも肉料理を強調した8000円のコースを設定するリニューアルをしました。
――かなり高めの設定ですね。
しかし、おかげさまでリニューアル以降、連日満員で席が取れない状態です。我々も店に行ってみたいのですが、せっかくお客様がたくさんいらしているのに、関係者で席を押さえるのはよくないだろうということで、今はなるべく行かないようにと言っているところです。
いずれにせよ、既存の「nomuno」とは違う形になっていますが、これが支持されたのだと見ています。