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本当はおいしい英国料理 パリで修業した料理人も認定

「ザ・ロイヤルスコッツマン」店内。ウイスキーはスコットランドのものを中心に100種ほど並ぶ

ところがある日、小貫さんの人生を大きく変える出合いが訪れる。「ル・ルペール・ドゥ・カルトゥッシュ」のシェフの故郷であるフランス北西部ノルマンディーを訪れた際、バグパイプ楽団の演奏を聞いたのだ。たまたま第2次世界大戦で連合軍がノルマンディー上陸を決行した「Dデイ」記念日にあたり、式典が開かれていたのだという。

「戦没者墓地が広がる中、何十人もが演奏するバグパイプの音色にものすごく感動して。『この楽器は絶対習得しなくては』と思った」と小貫さん。早速、楽団のリーダーらしき人物にパリの教室の連絡先を聞き、店の定休日に通うようになる。そして、1カ月もたつと料理よりバグパイプへの興味が強くなってきたという。「バグパイプを習得したいから、店を辞めたい」――楽器への思いが強まるばかりだった小貫さんは、とうとうシェフにそう申し出る。

エリザベス女王の戴冠式に由来するカレー風味の鳥料理「コロネーションチキン」(写真は「ザ・ロイヤルスコッツマン」のおつまみ用メニューで税込み600円)。サンドイッチの具材としてもポピュラーで、同店ではこれもメニューに並ぶ

「『ゴー・エ・ミヨ』(フランスのレストランガイド)で店の評価が上がり、僕が手がけた料理の写真が掲載された頃のことでした。シェフには『おまえバカか』と1カ月じっくり考えろと言われたけれど、思いは変わらなかった。どうしてもバグパイプだなって」と小貫さんは笑う。

楽器を習い始めて知った、新しい飲食の世界も魅力的だった。レッスンが終わるとみんなでスコットランド人が経営するパリのパブに繰り出したのだ。「それまで勤めていたレストランやビストロと違い、店の人とお客はとことんフラットな関係で、横にいる人が『お前どこから来たんだ』などと話しかけてくる。初めて味わった空気感で、なんだこれ、すごく楽しいなと思ったんです」(小貫さん)。滞在ビザの期限も迫る中、「帰国し、パブを開いてバグパイプを演奏する生活ができればそれでいい」と小貫さんは進路を決めた。

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