最後のパジェロ 37年の集大成、マニア泣かせる走り

2019/8/18

ファイナルエディションで選べる外板色は4種類あり、試乗車は今どきの売れ筋らしい「ウオームホワイトパール」だった。ただ、1980~90年代のスキーブーム時代に関越道追い越し車線をブッ飛ばすスーパーエクシードに身もだえた私としては、当時をしのばせる2トーンカラーの勇姿(ファイナル~では「スターリングシルバーメタリック/アイガーグレーメタリック」を用意)を最後に拝みたかったのも本音ではある。

プラットフォームは20年モノ

最後のパジェロとなる4代目は2006年10月に国内デビューして、ファイナルエディションにも搭載される3.2リッターコモンレールディーゼルの国内追加は2008年秋だった。

4代目パジェロはこれ以外にも基本的に毎年夏~秋の時期に、なにかしらのアップデートを受けてきた。なかでも比較的大規模な改良例としては、2010年のディーゼルの排ガス処理性能向上&新設計ATの採用、2014年のマイナーチェンジ(内外装フェイスリフトと静粛性アップ)、2015年のダッシュボードのソフトパッド化などがある。

奥行きがなく切り立ったダッシュボードは、いかにも本格オフローダーのテイスト。前方の見切りの良さが素晴らしい

このように地道にアップデートされてきたといっても、4代目パジェロそのものが登場したのは約13年も前のことだし、もっというと、その土台となるプラットフォームは1999年デビューの3代目からキャリーオーバーである。つまり、その基本骨格設計はじつに20年前までさかのぼるわけで、このファイナルエディションにしても、そこかしこに古さを感じさせるのは否定できない。

とくに設計年次を痛感するのが、ステアリングにチルト調整しか備わらないことや、インパネ中央のマルチファンクションディスプレイが粗いドット表示であること、そして現代の必須といえるADAS(先進安全運転支援システム)系装備が“皆無”であることだ。

今回クルーズコントロールスイッチに「ACC」との表記があって、瞬間的にアダプティブクルーズコントロールのことかと錯覚しかけたら、なんのことはない実際はただの加速=アクセル(ACC)用のボタンだった(笑)。だいたいアクセルをACCと表記するのも20世紀……どころか、昭和感すらただよう。

勇ましさあふれるパワートレイン

騒音対策も何度か重ねつつも、この最後のパジェロも走行中はガラガラとトラック然としたディーゼル音が目立つ。それはエンジンだけでなく、5段という今どきではいかにも少ないギア数のATが影響している面も多分にある。100km/hで2000rpm近くまで回るトップギアレシオはいかにも低いし、各ギアのステップ比も大きいので、変速ごとにエンジン回転がドシンドシンと派手に上下するのも騒々しさを強調する。

そのパワートレインに起因する振動や音量は、現代の感覚では笑ってしまうほどのボリュームだが、この点は先日マイナーチェンジする直前の「デリカD:5」も似たようなものだったので“三菱味”といえなくもないし、こういう勇ましさもエンスーには魅力となりえる。……と、今回はどうしても肯定的になりがちなのは、記念すべき最後のパジェロのアゲアシを取りたくない気持ちもある。ただ、それだけではなく、絶対的な動力性能になんら不満がないし、そもそもパジェロはとても運転しやすく、2020年に向けて工事だらけの都心で転がしてもまるでストレスがないからだ。

動力性能に不満はないものの、パワートレインからの振動や騒音は、現代の標準からすると、なかなかのボリュームだ

小山のように高い運転席によじ登ると、外界を高地から見わたせると同時に、キャビン内でも一段高く、アップライトな姿勢でダッシュボードも見下ろすことになる。とくに意識せずとも周囲を遠くまで見晴らせて、車体の四隅や四輪の位置もイメージしやすい。また、その運転席は比較的サイドシルに近い外側に寄せられており、ドアトリムも薄めなので、イザというときには身を乗り出してタイヤを肉眼で視認しやすい。角張ったボンネットは正確な車両感覚の重要な助けとなるし、リアコンビランプもわざとコーナーが出っ張った形状になっており、サイドミラーでランプそのものが視認できるから、バックでの幅寄せもドンピシャである。

これらパジェロに見られる運転席の人間工学的な工夫は、ランドローバーでいう「コマンドポジション」と実質的に同義であり、その多くは「ランドクルーザー」や「ジムニー」「ジープ・ラングラー」などにもみられる本格オフローダーではお約束のディテールでもある。

オフローダーの“四種の神器”

このように、パジェロにはもはや古びた部分と、古典的かつ普遍的な部分が同居しているのだが、少なくとも乗り心地や操縦性については今の目で見ても十分に現代的・乗用車的である。乗り心地も古典オフローダー特有の浮遊感めいたそれとは異なり、ステアリングはあくまで正確で直進復元力も弱くなく、フットワークはしなやかだが、位相遅れや横ズレめいた挙動はいっさい生じない。

オフロードマニアがあがめる古典メカといえば、独立ラダーフレームにリジッドサスペンション、パートタイム4WD、ボールナット式ステアリング……が“四種の神器”になるだろう。現在日本で手に入るSUVで四種の神器をもれなくカバーしているのはジムニーだけ。だからジムニーはカリスマなのだ。また、つい最近まではジープ・ラングラーや「メルセデス・ベンツGクラス」もそうだったが、新型となってラングラーの4WDにはオートモードが追加されて、新型Gクラスに残された神器はラダーフレームとリア(のみ)のリジッドサスペンションだけとなった。

「パジェロ」の車体はモノコックボディーの高剛性とラダーフレームの悪路走破性を併せ持つというビルトインフレーム型
フロントミドに縦置きで搭載される3.2リッター直4ディーゼルターボエンジンは、最高出力190ps、最大トルク441Nmを発生する