組み合わせ77通り 好みの音作るイヤホン工作に挑戦「年の差30」最新AV機器探訪

小沼 全然音が違いますね! さっきよりも透き通った音になりました。

小原 うん。明らかに音が伸びるようになりました。

フィルターによる音の変化を図で確認

平井 フィルターを変えることによる周波数の変化を記録した図がこちらです。

フィルターAを変えると音がどう変わるかを示した図。今回はA-7をA-5に変更した

小原 なるほど、A-7からA-5に変えると4キロヘルツのところが5デシベルほど上がっているんですね。わかりやすい。

小沼 すみません、そもそも表の見方がわからないんですが。

小原 横軸は周波数。右に行くほど高い音になります。縦軸が音圧で、上にいくほど音が大きいと覚えてもらえれば大丈夫です。それを踏まえてグラフを見てください。

拡大してみると、同じ音圧でも周波数が大きく異なる部分と差が小さい部分があることがわかる

小沼 低域はあまり変化せず、中~高域が変化するんですね。「どこがどう変わったか」を理解しやすいのは面白いなあ。

平井 より直感的に理解してもらえるようにした図がこちらです。A-7とA-5を比べると、高域が多くなり、低音が少なくなっているということですね。

フィルターAにどのフィルターを使うとどんな音が出るかを示した図。フィルターなしの状態では高音が多く低音が少ない、フィルターA-9を使うとその反対の音が聞こえることがわかる

細尾 ちなみにこの図は平井が一つ一つ聴きながら作成しました。

小原 直線ではないところにこだわりを感じますね(笑)。

前の音に引っ張られることも

平井 今度は低域寄りのチューニングを試してもらいます。「A-8」のフィルターを使ってみてください。

作業に没頭する2人。机中央に置かれている木製のトレーには、チューニング用のフィルターが入っている

小原 よし、できた。

小沼 早い! やっぱり日ごろ手先を動かしていると違いますね。

小原 オーディオ評論家兼イヤホン職人になろうかな。finalならぬ「start」ってブランドで。

小沼 小原さんなら本当にできそうだからなあ……っと、僕もできました! 聞いてみると、やっぱりA-8は低域が強いですね。

小原 うん。少しこもって聞こえますね。

平井 人の耳は直前に聴いた音に強く影響されます。高域寄りのA-5から一気に低域寄りに変えたので、余計に低域が強く聞こえるということもありますね。では最後に、もう一度A-7を聞いてみてもらえますか?

小原 すっきりした音で良いですね。これまで聴いた中ではA-7が一番好きだな。

小沼 たしかに、すごくクリアな音ですね。でも、はじめて聴いたときよりもさらにすっきりして聞こえるような……これが前の音に影響されているってこと? 混乱してきました……。

平井 ははは、でもよくあることですよ。私も会心の出来だと思ったイヤホンが、翌日出社して聴いてみたら全然良くなかったことがありました(笑)。イヤホンはしばらく使ってみないとわからないので、お客様にもそう説明しています。

「傾向」はあっても「優劣」はない

小原 「MAKE1」では他にどんなチューニングができるんですか?

平井 フィルターはもう1種類あって、音導管に専用のスポンジを詰めることで主に高域をチューニングできます。この2種類のフィルターの組み合わせで77通りの音が試せます。

小沼 ああ、どの音がいいか迷いそうだなあ。

上の図のように音導管の中にスポンジ状のフィルターを詰めると、より低域寄りの音になる

平井 あと、難易度は上がりますが本体を分解して中を開け、ドライバーベントと呼ばれる空気穴にマスキングテープを貼る……という技もあります。こうすることで、音がよりタイトになります。

空気穴にマスキングテープを貼ると、さらに低域寄りのタイトな音になる

小原 分解ですか。聞くだけでワクワクしてきますね。

小沼 僕が分解したらもとに戻せなくなりそう。でも、これだけ多彩なチューニングができるならきっと自分好みのイヤホンが作れそうですね。

細尾 イヤホンは耳の形の個人差にも大きく左右されますし、好みも十人十色。傾向はあっても、優劣があまりないんです。ぜひ好きな音を見つけてみてほしいですね。

平井 「MAKE2」と「MAKE3」ではさらに変えられる箇所が増えるので、847通り以上の音が試せます。いろいろ変えてみてほしいですね。

小原 あれこれいじって好きな音を見つけるのは、オーディオの楽しみですからね。ここからオーディオにはまる人が増えてくれるといいなあ。

finalのショールームにて。左から小原さん、平井さん、細尾さん、小沼さん
小原氏自作のスピーカー。塗料を混合してバイオリンレッドの色合いを作り出したという
小原由夫
1964年生まれのオーディオ・ビジュアル評論家。理工系大学を卒業後、測定器メーカーのエンジニア、編集者を経て現職。自宅の30畳の視聴室に200インチのスクリーンを設置する一方で、6000枚以上のレコードを所持、アナログオーディオ再生にもこだわる。今、お気に入りのイヤホンはFitEarのカスタムIEM「FitEar DC」(記事「高音質で耳にも優しい オーダーメードイヤホンを作る」参照)

小沼理
1992年生まれのライター・編集者。最近はSpotifyのプレイリストで新しい音楽を探し、Apple Musicで気に入ったアーティストを聴く二刀流。今、お気に入りのイヤホンはAVIOT「TE-D01b」(記事「1万円台の完全無線イヤホン 新興ブランドも音侮れず」参照)

(文 小沼理=かみゆ、写真 大橋宏明)

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