ザ・コインロッカーズ バンド初心者がここまでできる
秋元康がプロデュースするガールズバンド、ザ・コインロッカーズが6月19日にメジャーデビューした。総勢39人のメンバーの中から、楽曲ごとに選抜メンバーを選ぶシステムをとるのが特徴だ。デビュー曲『憂鬱な空が好きなんだ』の選抜メンバーは9人。ボーカルの松本璃奈、エレキギターの絹本夏海、ドラムの森ふた葉の3人に、新バンドについて聞いた。
松本 中学まではアイドルばかりを聴いていましたが、高校で軽音楽部に入ってから先輩にいろいろなアーティストを教えてもらって、KEYTALKさんの『MATSURI BAYASHI』という曲に衝撃を受けました。ツインボーカルということも驚きでしたし、YouTubeの動画を見たらみんな仲が良さそうで、バンドの怖そうなイメージが覆されて、私もやってみたいなって。
絹本 自分が大好きなアニメの主題歌をLiSAさんが歌っていたんです。ライブに行ってみたら、歌い方もMCもみんなで楽しめる魅力にあふれていて、LiSAさんのようなアーティストになりたいなと思いました。
森 影響を受けたアーティストは、あいみょんさんです。最初は母親がハマって、気付けば独特な曲調に私もハマっていました。たまに「あいみょんさんに顔が似ている」と言われることもあるので、意識してしまうこともあって(笑)。
希望とは違うパートに
松本 ザ・コインロッカーズのオーディションはドラムで受けたのですが、デビューシングルではボーカルに選んでもらいました。歌うのが得意なロック系の曲調だし、うれしさはもちろんありますが、軽音楽部の頃からいつも評価してもらえるのはボーカルで、「やりたいのはドラム、得意なのはボーカル」という感じです。いつかドラムで選抜に入りたいです。
絹本 私は中学・高校で部活を何もやっていなくて、「自分には何もない」と思っていたけど、自分を変える最後のチャンスだと応募しました。楽器が何もできなかったから、ボーカルで頑張ろうと思っていました。でも、オーディションに合格した後で、「何かやってみたい楽器はありますか?」と聞かれて、初めて楽器を練習するなら「エレキギターをやりたい」という自分の気持ちに初めて気が付きました。
森 私は小学生の頃に和太鼓を習っていて、中学の吹奏楽部でもパーカッションを担当して、リズム感を褒められることが多かったので、ドラムを希望しました。希望通りにドラムで選ばれたけど、私よりドラムがうまいメンバーが何人もいるので、最初はちょっと複雑な気持ちもあったかな。でも、このバンドのいいところは、演奏がうまいからではなくて、その楽曲にどれだけ合っているかで選ばれることだと気持ちを切り替えて、前向きに練習をしています。
松本 選抜発表の後にメンバー全員での合宿がありました。最後に、選抜メンバー以外もいくつかのバンドに分かれて同じ曲を演奏したんです。そうしたら、自分たちよりもうまくてまとまっていると感じるグループがいくつもあって…。
絹本 あのときの焦りから、みんな選抜の自覚が出てきて、そこから猛練習してみんなの気持ちが固まりました。
ザ・コインロッカーズを統括するワーナーの団野氏は、オーディションから見てきた3人の異なるキャラクターをこう評する。「松本さんはしっかりしたまとめ役。絹本さんは、とにかくエレキギターを弾く姿が絵になるガーリー担当。森さんは、いつも現場を明るく盛り上げてくれるムードメーカー」。
絹本 『憂鬱な空が好きなんだ』はネガティブとポジティブが混じり合った曲だと受け止めています。何人ものメンバーから「きぬちゃん(絹本)のことを歌っていると思った」と言われました。やりたいことが見つからなくて、引きこもっていた時期もあるからこそ、自分が選ばれたんだと納得しました。
森 そうなんだ。私はJKらしさが出ている明るい曲で、ドラムが叩きやすいなって感じていました。
松本 私は「校庭を何周走れば/叫びたい」という歌詞のように、自分も叫びながら走りたくなる曲だなって。ネガティブな女の子の気持ちを歌っているけど、そんな感情を肯定してくれているなって。
絹本 みんな、受け止め方が違うんだね。
バンド人口を増やしたい
松本 私は軽音楽部を経験して、そのときからバンドはチームワークが一番大切だと思っているから、曲の解釈を無理に全員統一する必要はないかなと思っています。毎回選抜メンバーが変わっていくなかで、嫉妬することがあるかもしれないけど、お互いにいい関係を築いていければ。
絹本 今はとにかく、"うまくないとダメ"っていう、バンドの概念を覆したい気持ちが大きいですね。
森 楽器初心者でもここまでできるんだよというのを見せて、「私にもできるかも」と思ってもらって、バンド人口が増えることにつながればうれしいです。
松本 ロシア人(ゴリヤノバ・ズラータ)やイタリア出身のメンバー(Emily)もいるので、いずれは海外進出するのが夢です。
(ライター 高倉文紀、日経エンタテインメント! 伊藤哲郎)
[日経エンタテインメント! 2019年7月号の記事を再構成]
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