秋元康のガールズバンドデビュー 39人が激しく競う
秋元康がプロデュースするガールズバンド、ザ・コインロッカーズが6月19日に『憂鬱な空が好きなんだ』でメジャーデビューした。秋元のプロデュースといえば、AKB48や乃木坂46のイメージが強いが、ザ・コインロッカーズは"ビジュアル"も重視しながら、アイドルではなくバンドである点を強く打ち出す。5月から「SHOWCASE LIVE」と銘打って、5大都市を中心に、年内に約150公演のライブハウスツアーを敢行。結成発表会から、ちょうど1年後となる12月23日に、バンドの登竜門であるZepp Tokyoでのワンマンライブをソールドアウトさせることを目標として掲げる。
ターゲットは、「自分もロックバンドをやってみたい」と考える女性層。初パフォーマンスの場として、5月の「GirlsAward 2019 SPRING/SUMMER」を選び、オープニングアクトで選抜メンバーが演奏した。
2018年9月に開始した全国オーディションには約1万人が応募。39人の合格者たちは、楽器演奏技術が高いメンバーばかりでなく、初心者も多い。ザ・コインロッカーズを統括するワーナーの団野健氏は「女の子たちがバンドに打ち込んでいく姿を見ていただければ、アイドルには興味がない層も関心を持ってもらえるはず」と語る。
パートごとに激しい競争
ザ・コインロッカーズの最大の特徴は、39人のメンバーのなかから、楽曲ごとに選抜メンバーを選ぶシステム。表題曲に選ばれなかったメンバーたちは、各カップリング曲ごとに結成されたバンドで活動し、次のシングルで選抜入りを目指す。
既存のアイドルグループと違うのは、パート(ボーカルと楽器)ごとの競争となること。「初めてのことに挑戦するなかで出てくる反応を見るために、本人の希望とは異なるパートも試してみました」(団野氏、以下同)。
ロックチューンのデビュー曲『憂鬱な空が好きなんだ』の選抜メンバーは、ボーカルが松本璃奈、エレキギターは絹本夏海、HANNA、手塚愛乃の3人、アコースティックギターのEmily、ベースの鏡味のぞみ、ドラムの森ふた葉、キーボードを有働優菜、田村愛美鈴の2人が担当する、計9人という編成だ。
このうち、絹本と田村は、楽器初心者ながら選出された。また、絹本はボーカル志望だったが、「いい声をしているのですが、リズム感に課題があった。ギターを持たせてみたら立ち姿が美しかったので」、初めてのギターに挑戦することに。グループの顔であるボーカルの松本も、第一志望はドラムだった。「松本さんは最初の頃はきれいに優等生的な歌い方をしていたが、もっと太く泥臭く歌うように伝えてからの変化が良かった。森さんは、最初は吹奏楽部出身らしいおとなしいドラムだったが、すぐに派手な叩き方ができるようになった」
ライブハウスツアーは、東京ではGARAGEやReG、CLUB251など下北沢のライブハウスが多数ラインアップされている。デビュー曲のCDジャケット写真も、下北沢で撮影された。「下北沢をザ・コインロッカーズにとって象徴的な街にしたい。ロックやサブカルチャーの発信地であり、時代に合わせて日々変化している姿が、ザ・コインロッカーズの"夢は弾いてかなえろ!"というコンセプトに合っている。夏フェスなどの参加も目指すが、それはまだ先の話です。まずはライブハウスなど、外の世界で様々な経験を積むことが大切だと思っています」
(ライター 高倉文紀、日経エンタテインメント! 伊藤哲郎)
[日経エンタテインメント! 2019年7月号の記事を再構成]
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