映画『風をつかまえた少年』 14歳の発明が開いた扉恋する映画 原作者ウィリアム・カムクワンバ氏インタビュー

■自分から動かないといけないと祖母が教えてくれた

――とはいえ、ウィリアムさんも最初は周囲からなかなか理解されずに苦しい時期もあったそうですが、そのときに支えとなっていたものを教えてください。

ウィリアム:それは、祖母の存在です。マラウイでは、男性と女性の仕事は分けて考えられており、そのなかでも家用のレンガは伝統的に男性が作るものとされています。にもかかわらず、僕の祖母は自分でレンガを作っていました。当然、周囲からは「なぜ旦那さんにお願いしないのか?」と言われたそうですが、そのとき祖母は「もし自分たちの畑で火事が起きたとして、何もしないで待ったりはしないでしょ?」と答えたそうです。

『風をつかまえた少年』(C) 2018 BOY WHO LTD / BRITISH BROADCASTING CORPORATION / THE BRITISH FILM INSTITUTE / PARTICIPANT MEDIA, LLC

――そういう家庭環境も大きく影響していたのですね。

ウィリアム:そうですね。祖母は「自分が対処しなければ、ほかの人もその問題には気が付かずに終わってしまうこともある。だから、まずは自分が動かなきゃいけない」とも話していました。それを聞いたときに僕が感じたのは、「だったら、僕も自分から動いて風車を作っていいんだ」ということ。そういう気持ちがあったからこそ、周りに理解してもらえなくても、僕のことをみんなが笑っているときでさえも、がんばることができました。

あとは、「この風車も世界のどこかにいるほかの人間が作ったものなんだから、同じ人間である自分も同じことを達成できるはずだ」というのを信じていた気持ちもあったと思います。

■本を読むことの大切さとは?

――風車のことを知ったのは、1冊の本との出合いがきっかけだったそうですが、それによってウィリアムさんの人生のみならず、国を救うことにもなりました。ただ、残念なことにいまは本離れが進んでいます。改めて本を読むことの素晴らしさを子どもたちに伝えていただけますか?

ウィリアム:読書はすごくパワフルな体験だと僕は思っています。というのも、本は自分の周りに起きていることだけではなく、世界中のさまざまな情報を得ることができるもの。そうやって、いろんなことを学べるというのが本の魅力だと知ってもらいたいですね。

『風をつかまえた少年』(C) 2018 BOY WHO LTD / BRITISH BROADCASTING CORPORATION / THE BRITISH FILM INSTITUTE / PARTICIPANT MEDIA, LLC

――その一方でデジタル化が加速し、自分で考えるよりも先にインターネットですぐに答えにたどり着ける時代です。それによって、子どもたちから自発的な発想力を奪っている部分もあると感じていますが、自らの知恵と能力だけで風車を完成させたウィリアムさんから見て、いまはどのような意識が必要だと思いますか?

ウィリアム:僕はバランスの問題だと思っています。確かに、インターネットで検索するのは簡単なことですが、もしスマホのバッテリーが切れたら、何も調べられなくなり、物理的にアナログな状況になりますよね? そのときのためにも、自分で考えて解決できる力を育てていかないといけないとは感じています。

いまの私たちはテクノロジーに夢中になり、頼りすぎているので、学ぶことや理解することに関して、シンプルなことを忘れてしまいがち。たとえば、地図でも経路を示してくれるアプリではなく、紙で見てちゃんとナビゲーションできる人はどのくらいいるんだろうかと思ってしまうほどです。

――確かに、多くの人が依存している状態と言ってもいいかもしれません。

ウィリアム:それに、インターネットは本に比べると、簡単に情報を発信できることもあり、あえて違う内容を流しているときもあるといわれています。そんなふうに間違った情報もたくさんあふれているので、注意しなければいけませんし、いまはどれが本物で、どれが本物じゃないかというのを見極めるのが難しい時代。だからこそ、アナログとデジタル両方のバランスを取りながら、思考力や判断力を育てていくことが必要なんじゃないかなと思います。

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