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長友選手のカラダ再生 脂質で変えるファットアダプト 食事法の監修医師・専属シェフに聞く(上)

日経Gooday

2019/8/18

■長友選手と加藤シェフの「衝撃的」な出会い

――続いて、専属シェフの加藤さんにお聞きしたいと思います。2017年に長友選手が出された『長友佑都の食事革命』(マガジンハウス)でもご登場されていて、長友選手と二人三脚で食事改善を進めた話が印象的でした。長友選手の食事を担当するようになった経緯を改めて教えていただけますか。

長友佑都専属シェフの加藤超也さん

加藤シェフ 私は以前、横浜のイタリア料理店に勤務していて、その店に、横浜F・マリノスでプレーしていた中澤佑二さんがよく食事にいらっしゃったのです。

中澤さんは、オーダーの際に、肉の部位を細かく指定したり、サラダはドレッシングでなくオリーブオイルと塩を希望するなど、“アスリートとして”の食への徹底したこだわりがありました。

もちろん私も「素材の持ち味を最大限に引き出す」をテーマに一生懸命料理をしていたわけですが、食事で体に入れるものにこだわるアスリートの真摯な姿を見て、体に入れるものを作る料理人としての食材知識について、自分自身の無知さに恥ずかしさを覚えたのです。

食を扱う仕事として、人の体の仕組みや栄養についてより多くの知識を得て、アスリートのパフォーマンスを高めるためのサポートができるシェフになりたい、と思うようになりました。アスリートの栄養学の資料を手に入れたり、食事によって体質改善を果たしたジョコビッチ選手の本(『ジョコビッチの生まれ変わる食事』(三五館))などを片っ端から読み、部屋の壁には「新たな道を作る」という言葉を掲げて、自分なりに勉強をしていました。

――その後、長友選手とはどのようにして出会ったのですか?

加藤シェフ 食について学び始めて2年たった2016年の早春のことでした。いつものようにレストラン勤務を終え、終電で自宅に帰る途中、たまたまツイッター(Twitter)を開くと、当時、インテル・ミラノに所属していた長友選手が自身のケガに悩んでいることや、試行錯誤して食事法を追究し、食事の写真をアップしているのを見たのです。

私はツイッターをやっていなかったし、どうして彼の投稿を見たのか、よく覚えていません。ただ、その投稿を見て、直感的に「この人のサポートをしたい」と思いました。「長友選手に連絡をとりたい」と思いましたが方法がわかりません。

そこですぐにツイッターのアカウントを作り、彼だけをフォローして、自分の簡単なプロフィールとともに、「アスリートをサポートするシェフとして活動できるなら、今すぐ世界中どこへでも駆けつけて支援する覚悟があります」というメッセージを送りました。

深夜に送ったのに、6時間後に返信をいただきました。後日、電話で1~2時間お話しし、「日本に帰国したときに会いましょう」と言われました。

――驚くようなストーリーですね。そして、長友選手がミラノから日本に帰国されたときに「料理面接」があったのですね。

加藤シェフ はい。「実際に料理を食べて決めたい」ということで、場所は都内某所のマンションでした。最初の面接が最終面接のようなものですから、人生で一番緊張しました(笑)。

一品目は「スープ」。枝豆のスープ、トウモロコシのスープ、そして新玉ねぎのスープという3種類のスープを少しずつ提供しました。味付けは水と塩とオリーブオイルだけで、素材の味を味わっていただきました。

後から聞いた話ですが「あのスープがびっくりするほどおいしくて感動して、あの瞬間に決めた」と言ってくれました。それから現在に至るまでの3年間は、1年のうち3分の2以上は長友選手に帯同して料理を作り続けています。

■食後血糖値を測定して、最適な糖質量を決めた

――そうして加藤さんが専属シェフとなり、長友選手との生活が始まったのですね。一方、監修者である山田先生がお二人に関わることになったのは、どのようないきさつがあったのでしょう。

北里大学北里研究所病院 糖尿病センター長の山田悟さん。糖尿病専門医。食・楽・健康協会代表理事

山田医師 実は、私にも運命を感じるきっかけがあったのです。お二人が食の取り組みをなさっていることを紹介した記事が『Number Do』(文藝春秋)という雑誌に掲載されました。その記事を妻(食・楽・健康協会副理事長を務める山田サラさん)が読んで、「運命感じる!」と私のところに持ってきたのです(笑)。

当時、長友さんと加藤シェフは、「糖質の摂取量を落として血糖値の乱高下を防ごう」という方法に取り組んでおられました。しかし、それによって体重が落ちてしまうといった問題を抱えていらっしゃるようでした。

アスリートに求められる体重は、そのスポーツ(さらにはその中でのポジション)によって変わります。長友選手のようにサッカーにおけるサイドバックというポジションは、ボディコンタクトが多く発生しますから、体重が必要以上に落ちてしまうことは当たり負けのもとになってしまいますし、下手をすると負傷につながります。そして、サッカーという持久力が求められるスポーツにおいて、パフォーマンスを維持するために脂質をエネルギーとして燃やし続けられる体に変換する必要も感じました。

もしかしたら、彼らの悩みを払拭するためにお役に立てるかもしれない、と思いました。そこで、共通の知り合いを通じて連絡をとったのです。

――実際に3人で会われて、どのように食事の方向性が決められたのですか。

山田医師 長友選手は、かつて「食後に眠くなる、頭がさえない、ピッチに立つときにぼーっとする」という悩みも抱えていました。これは、食後に高血糖が起こったあとに、遅れて大量に分泌したインスリンの影響によって低血糖が起こっている可能性を示します。

低血糖になったら運動どころではありません。パフォーマンスは明らかに低下します。また、血糖値が乱高下する状態は免疫細胞にも悪影響をもたらし、創傷治癒(そうしょうちゆ)を遅らせ、全身の機能を低下させる可能性もあります。つまり故障につながりやすく、リカバリーも悪くなります。

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