後継ぎ社長が新ブランド一人営業 原点はアルバイト松山油脂 松山剛己社長(下)

――就職活動が嫌になったというのは?

「合同説明会に行った初日、なんだか気持ち悪くなってしまって。みんなそれまで好き放題やっていた仲間が、急に真面目な顔をして、何百人も同じリクルートスーツを着て集まっているのを見て、『なぜ、そこに自分が?』と思ってしまいました。それで、所持金2000円だけで、東北へヒッチハイクの旅に出たんです」

――わずか2000円でどうやって生活したのですか。

「ラーメン店でアルバイトをし、2階で寝泊まりさせてもらうなどしました。本当は青森まで行きたかったのですが、行けずに宮城県のあたりをウロウロしていました。2週間ぐらいで何となく頭がスッキリしてきたので東京へ戻り、まずはどこでもいいから就職して、与えられた仕事を一生懸命やってみよう、と。新卒で入った博報堂には結局、4年間いました」

――会社員時代の経験で、今につながっていると感じるのは。

「振り返ると、博報堂に入ったことは、一番、ためになっているかもしれないですね。デザイナーやクリエイターの頭の中って、理屈じゃないんです。見ていると、アイデアの丁々発止のやり方がとてもうまい。例えば、あえてたたき台をつくり、そこにみんなの意見を乗せて、みんなでつくったように見せかけて、実際はクリエーティブディレクターが自分の思うままに操っている。たたき台にみんなの意見を乗せていくことで、そこにいる全員が『これは自分のアイデアだ』と感じられるようになる。場合によっては、目の前のクライアントだけではなくて、その先の小売店まで巻き込み、みんなが『この製品を作ったんだ』と思わせることまで、できてしまう。私自身は外資系企業相手の営業を担当していましたが、そういう打ち合わせを見ていて、とても勉強になりました」

野草でつくったスキンケアブランド「北麓草水(ほくろくそうすい)」も手掛ける

「海外では最近、MBA(経営学修士)が取れるビジネススクールよりもデザインスクールへ行く人が増えています。それはやはり、時代が大きく変化していく中で、論理的思考で考え、数値化して割り切れるビジネスの世界じゃなくなってきているからだと思います。これまでにない、全く新しい事業を生み出すには、ある種、学芸会的な盛り上がりも必要です。そういう時に必要な人を巻き込んでいく力を、優秀なクリエーティブディレクターは持っています。30年以上も前に見聞きしたことではありますが、今になると、博報堂での経験はとても参考になっています」

「グループの売上高が50億円から60億円を超えたあたりから、社員の顔と名前を覚えられなくなりました。会議もすべて出席できるわけではないですし、チームワークが必要だと実感しています」

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