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魚も人のように夢をみる? よく似た睡眠サイクル確認

日経ナショナル ジオグラフィック社

2019/8/5

ナショナルジオグラフィック日本版

ゼブラフィッシュの成魚。この小さな魚の神経活動を調べた新たな研究では、人間のレム・ノンレム睡眠と同様のサイクルで眠ることが示唆された。(PHOTOGRAPH BY BLICKWINKEL, ALAMY)

眠れぬ夜もあっただろう。だが、科学者たちがこの研究に捧げた10年が、ようやく報われた。小さな魚、ゼブラフィッシュの脳の睡眠パターンを特定し、そのパターンが人間の睡眠中の脳の活動と非常に似ていることを突き止めたのだ。

2019年7月10日付けで学術誌「ネイチャー」に発表された論文によると、魚類と哺乳類で同じような睡眠パターンが見つかったことは、共通の祖先における睡眠の進化を解明する手がかりになるかもしれないという。これは、睡眠の生物学的な機能の理解を深めることにもつながる。

「睡眠は、神経科学における大きな謎なのです」とミバエの睡眠を研究する米カリフォルニア大学サンディエゴ校の生物学者ウィリアム・ジョイナー氏は話す。睡眠は何のためにあるのか、その答えを求めて多くの研究が行われてきた。しかし、「本当の意味での正解には、誰もたどり着いていないのです」。なお同氏は、今回の研究には関わっていない。

■レム睡眠とノンレム睡眠

今回の研究では、ゼブラフィッシュが眠りに落ちるところを観察するために、高度なイメージング技術を用いた。その結果、ゼブラフィッシュの睡眠状態には、人と同様のサイクルがあることを発見した。レム睡眠とノンレム睡眠である。この睡眠パターンはこれまで、哺乳類や鳥類、トカゲなど、さまざまな動物で確認されてきた。だが魚では、今回が初の観察例だ。

研究チームによると、魚類と哺乳類の進化の関係を考慮すれば、レム・ノンレム睡眠的な現象が進化したのは4億5000万年以上前に遡るのではないかという。そうだとすると、このタイプの睡眠は生物学的にかなり古くからある現象だということになる。

「共通しているのは背骨があることだけではないのです」と論文の共著者である米スタンフォード大学の神経科学者フィリップ・ムーラン氏は話す。「睡眠とは何か、睡眠中に体内で何が起きているのかを理解する手がかりになります」

今回の論文で使用された手法は、睡眠の研究における新たな標準になる、と他の専門家は言い、ジョイナー氏は今回の論文を「技術的な偉業」と呼ぶ。だが、これで本当に睡眠の進化について多くのことが明らかになったと、誰もが納得しているわけではない。

「魚からネズミや鳥、爬虫類、人間に至るまで、まっすぐな一本線を引けるのか、私は疑問です」とネズミの睡眠を研究するスイス、ローザンヌ大学の神経科学者ポール・フランケン氏は話す。

■魚の神経活動を生きたまま観察

ゼブラフィッシュが眠るということは、行動観察の結果から、すでに知られていた。しかし、睡眠研究の王道は生理学だとフランケン氏は言う。

論文の著者である米スタンフォード大学の神経科学者ルイス・C・レオン氏は、複雑なイメージングが可能な顕微鏡を開発し、今回の研究で用いた。ほとんどの身体活動は、神経細胞(ニューロン)の複雑なネットワークがつかさどっている。ニューロンが活動すると、内部のカルシウム濃度が上がる。そこで、ゼブラフィッシュの遺伝子を操作して、カルシウムと反応すると緑色の蛍光を発するタンパク質を導入することで、活動中の体の領域がわかるようにした。

研究チームは、生後わずか2週間のゼブラフィッシュに的を絞った。この時期のゼブラフィッシュは透明だからだ。このため、傷をつけたり電極を埋め込んだりすることなく、脳やその他の体内の活動を観察できる、とレオン氏は説明する。

ゼブラフィッシュをゼリー状の物質に漬けて動けなくしてから、顕微鏡で観察を始めた。注目したのは、脳の活動、心拍数、筋肉の活動、眼球運動など、生理学的に鍵となる要素である。

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