まもなく、ニューロンが活動する時と活動しない時のパターンが判明した。レム睡眠とノンレム睡眠のサイクルに似た神経活動の証しを突き止めたのだ。

「思わず息をのみました」とレオン氏は話す。

その後、この活動パターンが本当に睡眠なのかを確かめるため、ゼブラフィッシュが「うたた寝」するのを邪魔して睡眠不足に陥らせた。この寝不足のゼブラフィッシュで実験したところ、同じニューロン・パターンが現れるだけでなく、より顕著になることを確認した。それに加え、心拍数が半減し、筋肉の活動が低下する深いノンレム睡眠のような状態になることもわかった。

ゼブラフィッシュの覚醒時の脳は、睡眠状態に比べると、ニューロンが無秩序に点滅してとても騒がしい、とレオン氏は言う。

共通祖先の睡眠

多くの生物は、温度などの環境要因によって、睡眠の長さと深さが影響される。例えば、人の睡眠時間は、気温が低い方が長くなる。哺乳類が体を温かく保ったり冷やしたりする体温調節は、レム・ノンレム睡眠に関連すると長年考えられてきた。しかし、ゼブラフィッシュの睡眠状態が人間と似ていることから示唆されるのは、体温調節ができるように進化する前から、このタイプの睡眠が存在した可能性だ、と研究チームは主張する。

しかし、今回の研究結果を哺乳類と関連付けるのは難しいと、米カリフォルニア大学ロサンゼルス校の睡眠科学者ジェリー・シーゲル氏は言う。哺乳類と魚類が枝分かれしたのは、はるか昔のことだからだ。ほぼすべての動物が眠ることは同氏も認める。だが、同じ哺乳類でさえ、睡眠は大きく異なる。

「単純に『睡眠は睡眠だ』とは言えないのです」と同氏は話す。哺乳類の中だけでも、1日に必要な睡眠時間は、3~20時間とさまざまだ。多くのクジラ類のように、レム睡眠をしない動物もいる。それとは反対に睡眠の大部分をレム睡眠が占め、カモノハシのように最大8時間も続く哺乳類もいる。

さらに、今回の研究は生後間もない幼魚で行われたが、その結果が必ずしも成魚にもあてはまるわけではない、とシーゲル氏は言う。動物界では、赤ちゃんと親の睡眠が異なるケースは多いのだ。

新薬開発に役立つ?

一方、特に今回の研究で使われた技術について、もっと好意的な見方を示す専門家もいる。睡眠パターンを示す神経活動のしるしが「魚で見つかるかは不明でした。ですが彼は今回、それを発見したのです」と米ワシントン大学セントルイス校の睡眠科学者ポール・ショー氏は話す。なお、同氏も今回の研究には関わっていない。「まさに驚くべきことです。本当にすごい!」

同氏らは、これほど小さな規模で睡眠を詳細に観察できるイメージング技術を特に賞賛している。

「百聞は一見にしかず。この技術で本当に気に入っている点はそこです」とショー氏は話す。「(今回の研究では)睡眠状態を推測する必要がないのです」

多くの国で、睡眠不足が人々に広まりつつある。今回の技術的進歩は、睡眠不足と闘うために新薬を開発する医療専門家にとって価値がある可能性がある。将来、今回のような観察技術を使って狙い通りの細胞を活性化しているかどうかを確認できるようになれば、薬のスクリーニング精度を高められるかもしれないと、レオン氏は語る。

「生きたままの動物の個々のニューロンを見て、さまざまな薬にどう反応するかを観察できるなんて、すばらしいことです」とフランケン氏は語る。「これは、大きな進歩なのです」

(文 JENNY HOWARD、訳 牧野建志、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2019年7月12日付]

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