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実り始めたスマート農業 産地格差や価格下落に課題

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NIKKEI STYLE

農業の現場に、情報通信技術(ICT)やロボットといった最先端の技術を導入する「スマート農業」が徐々に花開いています。政府は「農業の生産性を飛躍的に高める起爆剤になる」と強調しますが、過度な期待は禁物だとの声もあります。

スマート農業に注目が集まる背景には、農業での深刻な労働力不足があります。農林水産省によると、農業就業人口は2010年時点の260万人から、18年に175万人まで減りました。一方、農業を営む一つの経営体当たりの耕地面積は10年の2.2ヘクタールから18年に3.0ヘクタールに拡大し、1人当たりの作業面積が増えています。高品質な商品を効率よく生産し、競争力を高めなければ生き残れないのは、農業も他の産業と同じです。

自治体も先端技術の導入を促しています。例えば、川崎市は市内で創業したIT(情報技術)ベンチャー、ルートレック・ネットワークスと、市内の明治大学黒川農場を仲介しました。同社の技術を農業に応用するプロジェクトが実を結び、水や肥料の分量を自動管理する「ゼロアグリ」システムを13年から出荷しています。

流通にも変化が出てきました。農園からの提案を受けたIT企業が、野菜の売れ行きをスマートフォンで確認できる自動販売機を開発し、川崎市内で設置が進んでいます。

川崎市・都市農業振興センターの赤坂慎一所長は「商工業、大学などが集積し、生産者と消費者の距離も近いのは都市の強みだ。農業との多様な連携を促し、都市農業の可能性を広げたい」と話します。先端技術の効果は耕作面積が広いほど出やすい傾向があり、都市部で生まれた農業技術が他地域で活用され、生産性の向上に貢献する事例も増えています。

スマート農業は全国に広がるのでしょうか。明治大学の竹本田持教授は「労働力不足や高齢化への対応という面で、ある程度の可能性や実現性はあるが、全体に普及するかどうかは疑問」と指摘します。先端技術の導入には相応のコストがかかるうえ、天候を見ながら水や肥料を供給する過程に農業の楽しみがあり、極端な自動化を望まない農業者も多いとみています。

専修大学の徳田賢二名誉教授は「スマート農業は一定の規模がある地方産地で普及する」と予測します。相対的に競争力が弱い産地との格差は広がり、追い込まれる地域が出てくる可能性があります。徳田氏は、有力産地の生産力が高まると供給過剰となり、市場価格が下落する事態を懸念しています。スマート農業の負の側面にも目を向けつつ、じっくり育てていくしかないでしょう。

竹本田持・明治大学教授「農業とは何かを考えるとき」

農業の現場に先端技術を取り入れる「スマート農業」は、日本の農業の救世主になれるでしょうか。川崎市との連携に取り組んでいる明治大学農学部の竹本田持教授に聞きました。

――明治大学と川崎市との連携の現状はどうでしょうか。

「明治大学は様々なレベルで地域連携に力を入れています。キャンパスの所在地との連携は大きな柱です。生田キャンパス(川崎市多摩区)は川崎市との連携を深めています。もともと大学の付属農場が千葉と山梨にありましたが、それを統合・廃止して川崎市に黒川農場(麻生区)を建設したのです。かなり起伏があった土地をなだらかな農場に変える大規模な工事をするときに、地元の理解を得る必要があり、話し合いの場を持ちました。農場が完成すると、高い技術を持つ教員が数多く着任し、教員と地元農業との連携が活発になりました」

「連携の結果、『採りっきり栽培』と呼ばれる新しいアスパラガスの栽培法、菜の花に似たアブラナ科の野菜である『のらぼう菜』の栽培法、IT(情報技術)を活用した水分と肥料の管理システム『ゼロアグリ』などが生まれています。私自身は農学部の教員ですが、副学長として明治大学社会連携機構の機構長を務めています。同機構の傘下に地域連携推進センターがあります。大学全体が組織として川崎市と連携する場合は、私が担当しています。もっとも、大学と地域との連携はそれほどすっきりしたものではなく、非常に多面的に付きあっています」

――都市型の農業はどんな姿を目指せばよいのでしょうか。

「都市部における農地には緑地空間としての機能があります。都市の農地が減ると防災や交流、景観をはじめ、農地や農業が持つ公共性や社会性を保てなくなる恐れがあります。川崎市が農業振興計画を初めて作ったときは、空間としての『農』の大切さを強く訴えました。しかし、農家の方々の多くは自分たちは『農』ではなく、『農業』の担い手だと認識しています。現在の農業振興計画は、産業としての農業の強化に力点を置く内容になっています。私は農業、農家、農地の3つがそれぞれ大切だと主張しています」

――川崎で生まれた最先端の農業技術をどのように活用すればよいのでしょうか。

「都市部には限られた農地しかないので、開発した技術を売ろうと考えたら、川崎だけではビジネスが成り立たないのは当然です。優れた技術なら必ず全国に普及します。川崎が先端の農業技術の発信元となり第2、第3の技術が出てきて、集積の利益が生まれるのを期待しています」

「スマート農業には幅があるという点にも注意が必要です。例えば、究極の先端技術を使う植物工場は生産性が高くて素晴らしいという見方があります。確かに、高層ビルを植物工場にすれば単位面積当たりの生産力が高まります。地価が高い都市部で農業をするのなら、ビルでやったほうがよい、と考える人もいるでしょう。ただ、再び緑地空間の議論が出てきます。空間、景観、市民が土に触れるといった都市農業が持つ機能を排除していくことになるからです」

「私は、植物工場が席巻するようなことにはならないと思います。ある農家の方は、最新型のトラクターを運転するのを楽しみにしているのに、自動運転のトラクターが入って無人化が進んだら、それ以外の単調な作業が残ると語っていました。外部からみた農家の姿と、農家の方々の日々の楽しみ、充実感にはずれがあります。先端技術を入れれば競争力が高まるというだけでは、スマート農業は広がらないでしょう。農業とは何かをあらためて考えるときかもしれません」

(編集委員 前田裕之)

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