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無駄な書類はなかなか減らない。写真はイメージ=PIXTA

無駄な書類はなかなか減らない。写真はイメージ=PIXTA

掛け声倒れに終わりかねない「見せかけの働き方改革」が広がる。半面、生産性アップにつながる、無駄会議の削減や儀礼的手続きの廃止には動きが遅れがちだ。『仕事ごっこ』(技術評論社)を書いた沢渡あまね氏に、昭和の仕事慣習から抜け出す取り組み方を教わった。

「レガシー(遺産)」と「悪しき習わし」の差

痛快な本だ。日本企業にはびこる、「上司の方向に傾けて印鑑を押す」といった、くだらないセレモニーの事例を挙げつつ、廃止や見直しを促している。タイトルにある「仕事ごっこ」の定義は「ビジネスの場においてあたりまえとされているけれども、ムダに私たちの足をひっぱる慣習」だ。会議・稟議(りんぎ)や押印、相見積もりなどが具体的な事例に挙げられている。「レガシー(遺産)」という言葉には、歴史に残る業績というプラスの意味もあるが、本書で取り上げられているのは、大半が業務効率やモチベーションを落とす点で「悪しき習わし」と映る。「それぞれは小さなロスでも、積もり積もって業務効率をダウンさせている」と、沢渡氏は指摘する。

副題の「その"あたりまえ"、いまどき必要ですか?」が書き手の問題意識を端的に示している。「請求書は必ず現物を郵送する」はコンプライアンス面で必要と位置づけているケースもあるだろうが、「いったん、担当部署に問い合わせて損はない」と、沢渡氏は「小さな一手間」を提案する。「絶対に必要ですか。その理由は何ですか」と尋ねてみると、意外にも「別に構いません」という返事をもらって、いきなり業務が軽くなるという場合があり得るからだ。その恩恵にあずかるのは、すべての働き手だから、削減効果は大きい。「すぐに社内で広く共有して、手間を省いてほしい」(沢渡氏)

議題をはっきり決めない「とりあえず打ち合わせ」も時間ロスの原因だ。決めるべき内容が定まっていないから、だらだらした事情共有の場になりやすい。参加者も絞り込まれていないと、大勢が時間を奪われてしまう。「情報を共有するだけの会議は、メールや文書共有で置き換えが利く。メンバーを絞るのは、会議の趣旨を明確にするうえでもメリットが大きい」(沢渡氏)。利害関係者の顔合わせや、プロジェクトのキックオフ会合は珍しくないが、最後に「じゃ、詳細は今後、徐々に詰めていきましょう」としめくくるようでは、「参加者全員の貴重な時間を空費するだけの儀式にすぎない」と、沢渡氏は説く。

「働き方改革」は追い風

ただ、現実にこうした悪弊が残っているのは、それらを変えにくいことの証明ともいえる。押印ルールに不満を覚えて、上司に掛け合っても、「上の人を説得しにくい」「にらまれるだけ損だよ」といった事なかれ主義の対応を招きがちだろう。目先の売り上げのような分かりやすい業務成果ではないから、誰も「ファーストペンギン」を買って出ない。しかし、沢渡氏は「今は割とチャンス」とささやく。「働き方改革」という号令がかかっているおかげで、これまでは言い出しにくかった業務改善提案も上司に持ち込みやすくなっているからだ。「今の追い風を賢く利用してもらいたい」と、沢渡氏は現場発の改革への組み替えに誘う。

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